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某ホテル宴会場近く、階段の裏側にて
「なあ、本当にやるのかよ?」
いつものだらしない服装ではなく、きちんとしたスーツ姿でトオルが念を押して来る
「ええい、やるったらやるんだから!何回同じことを聞いてくるんだ?親友の汚名返上をしたくないのか、あんたは?」
近頃年齢相応に気持ちお肉の付いてしまった身体を、何とかスーツに押し込んだ、ヒロが勢い良く反論している
こんな時の親友が言っても聞かない事を長い付き合いの中でイヤという程知っているトオルは、諦めて黙り込んだ
「いや、ヒロ?肝心の本人達が居ないのに、やらかしたら秋ちゃんに怒られない?」
今度はこちらもスーツ姿のワンワンがおっとりと、宥めにかかる
基本彼も揉め事はあんまり好きではないのだ
「ワンワンは相変わらず穏健派だな〜?今日ここに居ないグランと言い、ちょっとアッサリしすぎてない?」
こちらもワンピースで正装しているトモチからクレームが上がった
ワンピース姿と言う事は…元を取る気満々だと言う事なのだろう
「そーよ!今日クライアントの接見があるから来られない、言い出しっぺのタナちゃんが不在だから、あたし達が「仕方無く」、やるんじゃないの!」
言葉の内容とは裏腹に、とんでも無く嬉しそうにヒロが言葉を続ける
いや、仕方無くじゃねーだろ…と男二人は心の中で呟く
「あ、いや、そりゃあ俺たちは真相を知ってるから大丈夫だけど…先生に知られたら、それこそ心臓麻痺か何か起こさないかなって」
控え目に控え目に、トオルが再度念を押す
「ええい、喧しい!やるったらやるの!あのオンナを地獄の底に突き落としてやるんだから!真実はいつもひとつなんだし!秋ちゃんの名に賭けて!」
「そ!ヒロの言う通り!死人に口なしを地で行きやがって、いけしゃあしゃあとネコに罪を擦り付けてるオンナに今日は目に物見せてくれるわ!」
…アカン…大体Shoottは女性陣の意見が圧倒的に強く、自分達の意見があまり採用されない事を、トオルとワンワンは改めて思い知っていた
そしてこの場に居ない4人への恨み言を延々と心の中で呟き続けるのだった
だからと言って…年に一度あるかないかの同窓会、しかも感染症対策で三年ぶりに開かれる同窓会でやる必要があるのだろうか
しかも…一番やる気になっているのが弁護士でもあるトモチ達であることだけは心配で仕方がない
これが発覚して資格剥奪なんて事にならなきゃ良いが
まあ、弁護士辞めても音楽の収入があるから大丈夫と踏んでの事とは思われるが
「でも本当ウチは男性陣が慎重派よね~?少しはあたし達の豪胆さを見習いなさいな!」
…俺達には家庭があるんだよ!
そう言いたかったが、それで太刀打ちできる相手ではない事は、トオルもワンワンも、今この場に居ないグランとネコも同じ意見だろう
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