戦いは始まった

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「をい、トオル、ワンワン…」 「「は、はい…」」 トモチのどすの利いた声がイヤモニから聞こえて来る 「あのオンナは何処だ?何処にいた?」 「「さ、さあ〜?まだ見つからない、かな?」」 命じられるままに大広間を一回りしている男二人の心中は只々穏便に終わってくれる事…その一点なので彼女らのターゲットを探すのも、心此処にあらず、であった 「いないはずはねーんだよ…秋ちゃんと張り合う事があのオンナの唯一のアイデンティティなんだから!もっぺん見て来い!」 それはちょっと言い過ぎでは…それに…あんた弁護士だろうにその言葉遣いは…トオルはそう思ったが口にはしなかった。それを言ってしまうと矛先が自分たちに向くのは火を見るよりも明らかなのがわかっているのだ 「しゃあない、人海戦術だ…!」 半分ほど入ったままだったのモエのシャンパンを一息に干すと近くのテーブルに叩きつけるように置き、トモチはカバンからスマートフォンを取り出し、何処ぞにメール?し始めた 「えーっと、トモチさん?一体どちらへ?」 恐る恐る、その表現がバッチリとハマる調子でワンワンが尋ねる 何某かの、勿論悪い方、予感に駆られて一足先に戻って来ていたのだ これならグランの代わりに事務所で留守番しておくべきだったか…そう思いながら ただ事務所でもタナちゃんが大暴れしてしまい、グランがその後始末に四苦八苦していた事は知る由もないのだが 「あんた達だけじゃ見つけらんないから、後輩共に連絡してんのよ!…お、きたきた!」 穏便派の二人を責めている間にも、トモチとヒロのスマートフォンがピコピコと受信の音を連続で奏で始めた 「いたいた…!よりによって、普段なら秋ちゃんの指定席にいやがった…!まぁ、丁度いいわ…」 何が丁度いいのか、スマートフォンの画面と会場を見比べながら、トモチが弁護士とは思えない「暗い」笑顔を浮かべている 獲物を追い詰めた肉食獣、とも表現出来そうではあるが 彼女の視線の先にはグレーのスカートスーツに身を包んだ、一人のショートカットの女性がいた 因みに千秋の指定席とは、彼女らが勝手にそう呼んでいるだけで、実際には会場の中央付近の事だ まあ、いつまでも老け込まない上、キレイでスタイルの良い人間が身近にいれば、大概の女性はその秘訣を知りたくて輪の中心にするんだろうけれど そして千秋はshoottの中でも、同窓生の中でも、断トツに「華」があるのだから
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