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チュンチュンと小鳥の囀る陽だまりの森を懸命に歩く。
四足歩行は大変だが、いつか慣れると信じたい。
吸い込む空気は美味しい…しかし犬になったせいかやたら色んな匂いが入り交じっていて混乱する。
土の臭い、水の臭い、花の臭いに少女の臭い……うっ!なんだこれ!!オナラ臭い!!もしかしてスカシやがったのか…?!
…はぁ。
犬には犬なりの苦労が沢山あるのをこの短い時間で思い知った。
そう思いながら少女の後を追っていると、不意に足が止まる。
慣れない四足歩行で止まれず、踵に頭をぶつけてしまった。
「ツノウサギさんだ!!イヌクサ、頑張って!!」
そう言って俺の後ろまで下がった少女。
目の前を見ると、ツノが生えた灰色のウサギがこちらをジッと見つめていた。
日本の野生動物と違い、逃げる様子はまるで無い。
すげぇ、本当に異世界だ……!!
改めてファンタジーを噛み締めるが、問題がある。
このプリチーな短い手足でやり合えるかと言う事だ。
そして…
『キュゥ…』
つぶらな瞳のこのウサちゃんを攻撃出来る訳が無い。
出来ればモフモフ同士仲良くしたい。
そう思っているとプルプル震えながら、恐る恐ると言った感じでツノウサギが近寄って来る。
この感じ、野良猫と触れ合う時と似てるぞ…!
俺も犬ながら出来るだけ柔らかい表情を作って歩み寄る。
そして、もう手がお互い触れ合える所まで来た…あと少しだ!!
そう思った直後、
『キュピィ!!!』
「わふぉっ?!」
急に目を釣り上げたツノウサギが強烈なアッパーカットを放って来た。
俺は体ごとかち上げられ、後ろに一回転して這いつくばる。
な、なにぃいい?!?!
慌てて体勢を建て直し、ツノウサギに向き直ると目を釣り上げながら口元をニヤリとさせていた。
く、くそ…!
この世界に慈悲は無いのか!!
「イヌクサ!ツノで目玉をほじくられ無いように気を付けてね!!」
こえーよ!!
俺は頭を振って気を取り直すと、体勢を低くして構える。
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