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「恋愛」と「結婚」の違い
「私がこれまでの人生でこの質問をしたときに出てきた答えは、すべてこの四つの中に収まります」
千也さんはそう言うと、ホワイトボードに書かれてた四つを声に出して読む。
「Aー相手を優先してついていく」
「Bー自分の行きたい方に一緒に連れて行く」
「Cー話し合ってどちらかに決める」
「Dーそれぞれが好きな方に行く」
そしてまたポンと手を叩く。
「さて、あなたの担当している会員さんがBタイプの方だったとき、カウンセラーのあなたはどのタイプの人を紹介しますか?」
少しだけざわつき、すぐに一人が手を上げた。
「Aタイプの人です。だってついて行くって言ってるから」
千也さんはうんうんと頷いた。
「Aは当然として、Cもいいんじゃない?」
千也さんはまたうんうんと頷く。
「そうですね、それが普通の意見です。でもね、皆さんは恋愛を考えるのではなく、結婚を考える立場にありますね。では恋愛と結婚の違いはなんでしょう?」
千也さんはぐるりとみんなの顔を見渡してから、「ハイ、キミ」とD案を出した男子に向けて視線で解答を促した。
「……長さですかね」
男子は自信なさげに答えた。
「そうね、それもあります。できれば添い遂げてほしいから、ずっと一緒にいてほしいわね」
初めて6回目の講座を聞いて、この千也さんの返答を聞いたときに、心のなかがなんとなくムズムズしたことを思い出していた。今、ここにいるみんなもそうだといいなと思う。
「ずっと…なのね」
それは最初ににAと答えてくれた真面目そうな女子の大きめの独り言だった。
「ハイ、ずっとですね。それが結婚です。Aは私が出逢ってきた日本人の中で、最も多い回答でした。私が出逢ってきた人の数なんてほんのしれていますが、人間の考え方のパターンなんてそれほどたくさんはないと思います。つまり皆さんが対する登録者さんの多くはAのタイプだと思います。でもね、結婚です。ずっとです。結婚とは生活です、ずっと続きます。お出かけだけではありません、夫婦の意見が合わないことは普通にあって当たり前です。「Bタイプの人にはAタイプ」と先入観を持ってしまってはいけません。この関係がずっと続いた場合、Aタイプの人のなかにはストレスが溜まっていく場合もありますね」
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