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CとD
「じゃあやっぱり、理想的なのはCだよな」
そう言った彼は机の上に肘をついて乗り出すような姿勢だった。
「ちゃんと話し合って向き合って決めるのがいいよな、なんでも」
そんな話を聞きながら、Dタイプを言った彼は少し不服そうだった。
「人生の大切なことは相談して決めるとしても、どこに出かけるかなんて簡単なことでその都度相談してたらストレス溜まると思う」
彼の意見はもっともだと私も思う。例えば子供の進路の問題と日曜日のお出かけは重さが違うのだから。
「それがわかっていることは大切よね。Cは結婚という関係のなかで、当たり前に持っているべき考え方だわね。結婚というのはお互いの人生を生きることなんだから。どちらが優先されるものでもなくね」
千也さんはそう言ってうんうんと頷きながら微笑んでいる。
「なんか、Dもありかなと思えてきました。ずっと一緒にいるだけでなくて、ちゃんと自分の意思も自分自身が尊重してあげる」
「でもDって淋しくない?」
女子の声に、また少し静かになる。千也さんはにこにこしながら黙っている。
「淋しくないようにすればどう?」
「どうやって?」
「例えば、彼女に海の映像を送るんだ。それで彼女からも頂上からの景色を送ってもらう。それで帰ってから自分が行った場所の話をお互いにする」
「次はそっちに行きたくなるかもね」
「プレゼンテーション合戦」
「自分の好きを伝えたいって思うの、良いと思う」
「相手の好きも映像やお土産で伝わってくると嬉しいかも」
「じゃあ次はどうしようって話し合いをするときに、そのことも資料になるよな」
初めて参加したときもそうだった。最初、かなり否定的に取られたDが、後半で浮上してくる。そして千也さんはにこにこしている。
「ただ仕方なくついて行くのと、行きたい気持ちも出てきてついて行くのとは違うよね、Aタイプも」
「だとすると難しいのは、Bタイプの会員さんに対するときだね、なんか俺の親父はBタイプだと思うけど。お袋は間違いなくAタイプ」
「つまり昭和世代ってこと?」
「昔はそれが当たり前の美徳でしたね。でも時代は変わっていますね。だけど若い皆さんを育てたのは昭和世代の方々が多いでしょう。教えられずとも生活の中で日々見てきたことは、心の根底にはあります。でも時代の変化のなか、ご自身の社会生活の中で芽生えていることもありますね。まずは正否を考えないこと、その上でそれぞれのタイプが組み合わされたときに、価値観の相違が生まれない考え方を想像してみること、それが皆さんが行う『アドバイス』というものなのではないでしょうか? アドバイスを聞いてどうされるかは、会員さんご自身が考えられることですね。今、皆さんが考えてくださったように」
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