我が子を守るため

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「へぇ、いいところじゃない!?」 久しぶりに会う由香は、すっかりお母さんが板についていた。 二人の子どもにも負けじと声を張り上げ、二の腕も逞しくなっている。 「チビを抱いてるだけで筋トレになるよね」 「分かる。だからそんなママたちの憩いの場にもなって欲しいの」 「うん、ここならホッとできるかも」 そう言って、店内を見回す。 たくさんの業者が入り混じって準備に追われており、賑やかだ。 天井が高く、広々とした空間。席はゆったり間隔を空け、テラスの向こうには子どもたちが遊べる広場があった。 「やっと景子の夢が叶うってわけね」 私より感慨深い様子なのは、これまでの苦労を知っているからだろう。 「自分のお店を持つのが夢だったから。秀人たちにも背中を押されて」 「いいんじゃない?子どもたちは、意外と私ら大人の背中を見てるからね。充実した姿を見せることが、いい子育てにも繋がるのよ…って、なんで笑ってんのよ?」 「だって、あの由香からそんな言葉が聞けるとは」 「今じゃ私も立派なママよ?独身の頃はさ、子どもなんて産むのは大変だし、でも産んだら終わりじゃないでしょ?うるさいし手もかかるし、キャリアは台無しだしで、良いことなんて何もないと思ったけど。今はあの子たちが居ない人生なんて考えられないわ」 そう言いながら、我が子を眺める由香は幸せそうだ。
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