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私たちはしばらく、広場で遊んでいる子どもたちを見守っていた。
年長の凛花が、おチビさんたちをまとめ上げている。
「ねぇ、あの子のことはもう大丈夫なの?」
由香が言う『あの子』というのは、志保のことだ。
「大丈夫よ。二度と姿を見せないと思うわ」
「それならいいけど…でも、母親でしょ?そんな簡単に割り切れるもの?私ならお腹を痛めて産んだ子と離れ離れになるなんて、考えられないわ」
「元々、母性がない子なのよ。自分の娘を道具にしか思ってなかったから。志保と一緒にいたら食い物にされて、凛花はダメになっていたはず」
「そうだよね…景子に引き取られて、あの子は幸せね」
それから試作品を食べてもらったりして、由香が子どもたちを引き連れて帰っていく。
ちょうどその時、水道管から水が噴き出すというトラブルに見舞われた。
「愛子と遊んでるからいいよ」
凛花の言葉に甘え、対処に当たる。
そういう時に限って次から次へと問題が発生し、ようやく片付いた時にはもう、かなりの時間が過ぎていた。
「ごめん、そろそろご飯にする?」
広場を覗いてみたが、二人の姿はない。
あれ、どこに行ったのかしら?
「凛花ー?愛子ー?」
勝手にどこかに出かけるような子じゃないのに…?
不安が胸をよぎり、名前を呼ぶ声もどんどん大きくなっていく。
どうして?
どうして何処にも居ないの!?
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