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「お願い…早くあの子たちを見つけて!お願いだからっ!」
取り乱して、秀人に縋りつく。
母親として、子どもたちを守ると決めたのに。
凛花の母となって、よりよい人生を送らせると誓ったのに。
それどころか私のせいで、私のせいで…。
「景子がしっかりしないでどうする?母親だろ?」
叱咤されるも、涙は止まりそうにない。
これが二人の無事を確認した嬉し涙なら、どんなにいいか──。
「凛花が居ないって!?」
飛び込んできた武藤は、血相を変えている。
「志保が連れ去ったのよ!凛花だけじゃなく愛子も一緒に…」
「それなら心配しなくていい」
「えっ?」
「志保が凛花に会いに来た時に、危ない感じがした。だから凛花に、何かあったらスマホのGPS機能をオンにするように伝えたんだ。居場所は分かってる!」
スマホの画面を突き出す武藤。
点滅しているのが、凛花と愛子がいる場所ということ。
そして、志保も。
私たち三人は、車で凛子のところに向かう。
しかし生きた心地がしないのは、GPSが1箇所でとどまっているからだ。
無事を確認できるまで、気が気じゃない。
志保の中にほんの僅かでも母性が残っていることを祈るしか──いや、違う。私はあの子の姉だ。妹が今、何をしようとしているか、どうやったら私を地獄に突き落とせるか、考えていることは手に取るように分かる。
だからお願い、どうか間に合って!
「ここだ!」
武藤が車を止めるより先に私は飛び出し、高台を駆け上がった。
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