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「やめて!」
私は金切り声で叫んだ。
ぎょっとして振り返った志保の手が、辛うじて止まる。
「お願いだから、やめて…」
「なんでここが?なんで分かったのよ!?」
苛立ったように愛子の手を引っ掴むと、自分の元に抱き寄せた。
逃げられないように。
「志保、やめろ!」
すぐやってきた武藤と秀人が、少しずつにじり寄っていく。
「来ないで!」
「凛花はどこだ?凛花は…?」
「来ないでって言ってるでしょ!?」
愛子を引きずりながら後退り、今にも階段を転げ落ちていきそうだ。
これ以上、刺激を与えるわけにはいかない。
「志保、よく聞いて!こっちを見て、お願いだから!」
両手を上げて主張をし、私はゆっくりと膝をつく。
「あなたが望んでるのはこれでしょ?私より上に立ちたいのよね?これであなたの勝ちよ。勝ったのはあなたよ」
地面にひれ伏して、頭を下げた。
「私の負けでいいから、愛子を返して。凛花はどこなの?」
「返して欲しい?教えて欲しい?」
「なんでもするから。いくらでも土下座するから…」
「本当になんでもするの?」
挑発的な笑みを浮かべている妹と、視線がぶつかる。
「…言う通りにするわ」
心を込めてそう答えると、どんどん口角が吊り上がっていく。
「──じゃ、死んでよ」
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