我が子を守るため

8/11
前へ
/131ページ
次へ
「やめて!」 私は金切り声で叫んだ。 ぎょっとして振り返った志保の手が、辛うじて止まる。 「お願いだから、やめて…」 「なんでここが?なんで分かったのよ!?」 苛立ったように愛子の手を引っ掴むと、自分の元に抱き寄せた。 逃げられないように。 「志保、やめろ!」 すぐやってきた武藤と秀人が、少しずつにじり寄っていく。 「来ないで!」 「凛花はどこだ?凛花は…?」 「来ないでって言ってるでしょ!?」 愛子を引きずりながら後退り、今にも階段を転げ落ちていきそうだ。 これ以上、刺激を与えるわけにはいかない。 「志保、よく聞いて!こっちを見て、お願いだから!」 両手を上げて主張をし、私はゆっくりと膝をつく。 「あなたが望んでるのはこれでしょ?私より上に立ちたいのよね?これであなたの勝ちよ。勝ったのはあなたよ」 地面にひれ伏して、頭を下げた。 「私の負けでいいから、愛子を返して。凛花はどこなの?」 「返して欲しい?教えて欲しい?」 「なんでもするから。いくらでも土下座するから…」 「本当になんでもするの?」 挑発的な笑みを浮かべている妹と、視線がぶつかる。 「…言う通りにするわ」 心を込めてそう答えると、どんどん口角が吊り上がっていく。 「──じゃ、死んでよ」
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1844人が本棚に入れています
本棚に追加