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「えっ…?」
「聞こえなかった?死んでって言ったの。なんでもするんでしょ?それとも口から出まかせ?いくら子どものためとはいえ、自分が死ぬのは怖いものね?優等生の振りして、ただの偽善者じゃない。所詮、自分のことが大事なのよ」
私のことを嘲笑う志保が、勝ち誇っている。
しかし、我が子に寄生する妹は分からないんだ。
母親は、子どもを守るためなら死をも厭わないということを──。
「私が死んだら、子どもたちは助けてくれるのよね?」
そう言って立ち上がった私を、訝しげに見つめている。
けれどその目に、僅かな怯えがあるのを見逃さなかった。
「どうせ嘘よ、死ぬ気もないくせに!いい加減なことを言うんじゃないわよ!」
「嘘じゃないわ。あの子たちが助かるなら、私はどうなっても構わない。それが母親だから。あなたも同じ母親なら、私の言うことが分かるでしょう?」
「わ、分からないわよ!あんたの言うことなんて何も分からない!いつも私の邪魔ばっかりして!私が不幸になるのを望んでるくせに!自分のほうが幸せになろうとしてくせにっ!」
「それなら、今からあなたが幸せになればいいわ」
「まさか──本気?」
「私が死ねば、幸せになれるでしょ?その代わり、子どもたちのことは解放して」
そう言うと、ゆっくりと志保に近づいていく。
自ら身を投げるために。
我が子を守るために。
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