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赤子の甲高い泣き声が響き渡る。
お腹が空いたのか、抱っこして欲しいのか、おむつが汚れてしまったのか、いずれにせよ我が子が泣いていた。
けれど、それすらも愛おしくて幸せに感じてしまうんだ。
「愛子、ちょっと待って」
手を止めて、指先についた小麦粉を布巾で拭う。
いつどんな時も、私は料理をするのを欠かさない。
食材を無心で刻んだり、ハンバーグの種を力いっぱいこねていると、余計なことが頭の中から消えていく。
けれどここ最近はようやく、これを食べてくれる人たちの顔を思い浮かべてながら、楽しく調理できるようになっていた。
大切な家族の笑顔が、私の心も温かくしてくれる。
「はいはい、今いくから」
相変わらず何かを訴える娘の元に駆け寄ろうとしたが、その前にピタリと泣き声がやんだ。
それどころか「キャッキャ」と、愛くるしい笑い声が聞こえてくるではないか。
その理由は、すぐに分かった。
「ほら、いないいないバー!」
愛子を抱いてあやしてくれるのは──姪っ子の凛花だ。
まだそう年が離れていないというのに、立派なお姉さんをしてくれている。
「伯母さん、遅ーい」
「ごめんね。でもいつもありがとう、凛花」
「だって、愛子は私の可愛い妹だから」
そう、愛子と凛花は本当の姉妹のようだった。
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