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「おっ、いい匂い」
仕事から帰ってきた夫の秀人がリビングに入ってくると、凛花が一目散に駆けていく。
「先生、お帰りなさい!」と。
そして秀人は、もう抱くには重くなっている凛花をそれでも抱き抱える。
「また重たくなったなぁ」
「だって、伯母さんの料理が美味しいんだもん!」
「あっ、それ分かる。どうしても食い過ぎちゃうんだよな」
「ちょっと聞こえてるわよ!私は栄養士だから、ちゃんとカロリーを計算して献立を作ってます。それでも太るのは、二人とも運動不足なのよ。もっと運動しなさい!」
キッチンから声を張り上げると、二人が顔を見合わせて笑う。
そのあと、秀人はベビーベッドで寝ている愛子の顔を覗き込む。
夫にとって凛花は血の繋がらない子であったが、分け隔てなく接してくれている。
「先生、ご飯のあとで練習してもいい?」
「あぁ、新しい台本を貰ったんだ。セリフ読みしようか?」
「どんな役?」
初めて共演した時に、秀人から演技指導を受けたことが忘れられず、凛花は今でも『先生』と慕っており、二人でよくセリフ合わせをしていた。
そのお陰もあって、私たち家族の中にもすんなりと溶け込んだのだろう。
初めっから、そこに居たみたいに…。
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