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「どうしてそう思うの?」
「だって、ずっとあなたと演技の勉強をしてるし。本当はやりたいんじゃないかって」
「そりゃ、あの子には才能があるからね。幼くして経験があるのも一つの要因だけど、凛花は読み取る力がずば抜けてる」
「読み取る力?」
「演じることそのものは、意外と誰でも出来るもんなんだ。ただ、本を理解して自分の中に取り入れて、演技として外に出す、それって出来るようでなかなか難しい。それをあの子は、あの歳で完璧にやってのけてる」
「じゃ、やっぱり…?」
「うん、そういった話もしてるよ。またやりたいなら、やればいいって。あの子は今はそれほど興味がないと言ってるけどね」
「それって本心かしら?私はできたら…やって欲しくないの。また表舞台に出るのは、色々と言うひとが出てくるから」
それは凛花だけじゃなく、自分にも当てはまること。
あれから一切、私はメディアには出ていない。
大人の私ですら怖く思うのだから、まだ幼い凛花なら尚更だろう。
「でもあの子の夢を潰しちゃってる気もするの。本当ならもっと伸び伸びと育てたいんだけど」
母親としてのジレンマは、尽きることがなかった。
「それは本人に任せておけばいい。俺たちが思うよりずっと、あの子は大人だよ。色んなことを経験してるから余計にね」
皿を拭き終わると、私の気持ちも少し軽くなる。
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