1844人が本棚に入れています
本棚に追加
「それより、景子はどうなの?」
不意の問いかけに「私?」と、首を傾げる。
「そろそろ、外で仕事してもいいんじゃない?」
「それは…」
「愛子はまだ手がかかるけど、俺も協力するからさ。それに凛花っていう強力な助っ人もいるし。もっと景子の食に対する考え方とか、そういうの世間に知ってもらったら、世の中は平和になるよ」
「ちょっと大袈裟じゃない?私はただ料理が好きなだけだし」
「その好きって気持ちを、伝えてくのは悪くないと思う。なにもまたメディアに出ろとは言わない。それ以外でも、料理に関するアプローチの仕方はあるはずだよ」
「じゃ、仕事を再開してうちのご飯が疎かになってもいいの?」
「それは困る!本当に困るっ!」
真顔で慌てる秀人に、思わず吹き出してしまった。
「でも、ありがとう。そこまで考えててくれたなんて」
「愛する妻のためなんで」
「愛する夫が応援してくれるなら、少し考えてみようかな?」
そうだ、なにも前みたく露出することはない。
私は誰かさんとは違って、目立ちたいわけじゃないんだ。
相手を思いながら作る手料理の素晴らしさを、出来ることから発信するのも良いのかも…それに私はまだ、夢を叶えてはいなかった。
自分のお店を持つという、長年の夢を。
最初のコメントを投稿しよう!