積み木の星。

2/2
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
 不味いことに相手の攻撃はロボットだけにとどまらず、俺たちがいる母船も攻撃目標と判断したらしく、惑星を覆う《pebble》が連結を始めだした。  「まずい! こっちまで攻撃する気です!」と、探査ロボットを操作していた俺が怯えた声を出すと、すぐに石田隊長が一等航海士の野田に「バリアーで何とかなりそうか?」と訊いてきた。  生憎、隕石除けのバリアーしかこちらには防衛手段がない。  だが出力が違いすぎる。野田は震える手で操縦桿を握りながら、「惑星規模のビーム兵器ですよ、おもちゃの楯で大砲に立ち向かうようなもんです!」と、返事をした。  そこで、石田隊長は「電磁波攻撃だ! ちっぽけなロボットの集合体なんだ! すぐダウンするだろう!」と、俺に命じたが、まったく効果がない。相手は連結することで、瞬時にシステムを構成し、どんな攻撃もシャットダウンしてしまう。  さすがに石田隊長が池山さんに「まだ連中の言語を解読できないのか!」と、催促したが、池山さんは「ダメです、思ったより言語が複雑で……」と、無念そうに首を横に振った。  《会話》という交渉手段がなければ、相手の誤解を解きようがない。  万事休すと思った時、相手から《降伏せよ! 抵抗は無駄だ!》と、通信が入ってきた。どうやら破壊した、探査ロボットの電子頭脳を解析して、こっちより早く地球の言語を学んだらしい。考えれば、《pebble》は連結することでなんにでも変身するんだ。惑星サイズのコンピュータになれば、学習速度は宇宙船のコンピュータなど問題になりはしない。  《君の仲間が持ち帰った種を返しなさい。約束しなければ攻撃を続行する》  なんだかわからないが、あっちにとって種はとても貴重なものらしい。  石田隊長が「わかった返却に応じよう」と、返事を送ると、ようやく《pebble》が武装解除してくれた。どうやらこっちに敵意がないのが分かったらしい。  《pebble》は我々に非礼をわびると、今度は『主人たちを救ってほしい』と、頼んできた。  第一次調査隊が石灰岩から植物の種を採掘したが、なんとそれが連中の創造主なのだ。  《pebble》の主人たちは急激な環境の変化に危機感を募らせ、種という姿で再び環境が戻るまで、苦肉の策で生命活動を休むことにしたのだ。  そう、この惑星の先住民はすべて植物人間で、《pebble》は彼らが冬眠している間の留守番ロボット――我々の時には好戦的だったのもどおりで、第一次調査隊は彼らからすれば人さらいだったわけだ。  (あっちの冷静な判断のおかげで命拾いしたものの、一歩間違えば惑星間戦争になるところだった……)  そう思うと、生きた心地もしない。  また新たな通信が入った。今度は《pebble》の主人からだ。  《pebble》の主人たちは、種の姿のまま留守番ロボットに変身させた翻訳機を通して和睦を申し入れてきた。  『火山活動のおかげで動物が減り、二酸化炭素が薄くなって困っていたのだ。酸素の量を減らすために休眠していたのだが、もし共存共栄を約束してくれるなら、君たちが移住するのに異存はない。平和条約に調印しようじゃないか』  この事実を知った時、先に地球に帰還した第一次調査隊のランバート隊長から、連絡が入った。  『大変だ! あの種が発芽して、みるみる人間のような姿になっていくんだ!』  これを聞いて、石田隊長は苦笑しながら応答した。  「地球を訪問した、あらたな同盟惑星の知的生命体だ。くれぐれも粗相がないようにと外務大臣に伝えてくれ。下手すりゃ戦争の火種になりかねない」  それから石田隊長は《pebble》の主人から植物人間の栽培の仕方を教わり、地球の視察を終えた仲間を送ると約束した。  この任務の後でランバート隊長から教えられたが、発芽して急速に成長した異星人はアリゾナ州とユタ州の境界付近にあるバーミリオン・クリフス国定公園内の砂漠を視察したときに「地球にも、我々の星と似たような風景がある!」と、しきりに驚いていたそうだ。                          了
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!