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そのドアは、アルミで出来ているのであろうか、
大きさの割には重さを感じさせない。
だが、長い年月の為か汚れが酷く手に汚れが付く。
中に入ると、何と無く肌寒い、そして異臭がする。
「何か、臭うね」
と、僕は少し怯えて言ったが、
雄一君は何も応えてはくれない。勇敢にも奥に入って行く。
ビルの中は薄暗く、数歩進むと階段があった。
「昔、ここはアパートだったらしいよ」
と、雄一君が階段を上がりながら、振り向き
僕に言った。
「アパート?!だったら此処には多くの人が住んでいたんだね」
と、何故かホッとする気持ちが湧いた。
「でもね、此処で何かあったらしよ」
と、雄一君が後ろにいる僕に聞こえる様に
少し大きな声で言った。
「何かって何?」
と、僕の声も大きくなる
「知らんけど?!誰かが言っていた。
此処で殺人事件があったとか、飛び降り自殺があったとか、そう言う噂があるんだってこのビルは。」
「なんだか、いい加減だね。噂なんてあてにならないよ」
と、僕は恐怖心を抑えながら強がるように言ってみた。
2階に上がると、目の前に廊下が見える。
右手の壁には埋め込まれた窓があり、そこからの日差しで明るさは保たれてはいるが、不気味な感じは否めない。
廊下を歩いて行くと左側に個室のドアが何室も並んでいた。
「誰か居ませんか?」
と、雄一君はおどけてドアをノックしている。
「居る訳なじゃんか!そんな事するなよ。
誰か居たら怖いし」
と、僕は大きな声で咎める様に云う
「居る訳無いのに、居たら怖いって矛盾するぞ。何言ってるんだ!」
と、怒ったのだろうか言い方が少し強い。廊下を歩いて確認すると、ドアは6枚あった。
部屋の数は6室だ。
「このビルは、4階建てだったね。だとすると、24室あるんだね」
と、僕は独り言の様に呟いた。
「全部が同じ造りだとは、限らないよ。上にあがろう。」
と、雄一君はまた、階段を昇っていく。
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