気になって仕方がない 〜天音side〜

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昨日は年に1度のビルの防災訓練で、久しぶりに俺も参加することになっていた。 そして稀にだが、外部の面談がない日は、スポーツウェアを着て自宅のマンションから走って出社することもあった。 防災訓練でビルの1階まで降りることを考えると、服装もちょうど良さそうだ。 防火扉を開けると、「はぁぁぁぁぁぁぁぁ」と大きな溜め息が聞こえてきて、驚いた。 (誰だ、こんなに黒いオーラを発しながら防災訓練に参加してる奴は……) スポーツウェアで参加している俺も他人(ひと)のことは言えないが、こんなに陰気なオーラを出している奴も大丈夫か?と疑ってしまう。 顔を覗いてみると、なんとマーケティング部の山本沙耶だった。 いつも明るくて愛嬌のある山本から、 こんなに陰気な雰囲気が漂っているのには心底驚いた。 一体、何があったんだ? 「どうして私が訓練担当になったんだろう…良いんだけど、昨日のは流石に堪えたな…」 「昨日のが、なんだって?」 つい、声をかけてしまった。 山本は詳しく言いたくなさそうだったが、どうしても気になって、いつもならこんな風に女性に踏み込まないのに再度聞いてしまった。 「……で、プライベートで何があった?」 「え?!えっと……あの、付き合っている人の浮気現場を目撃してしまって…しかも私達シェアハウスで出会って付き合い始めて、浮気相手は最近入ったシェアメイトで。もう、最悪でした。」
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