①生首転がし

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①生首転がし

⚫︎アズマ:それでは対談を始めていきたいと思います。まず最初は「生首転がし」について語り合いたいと思います。 生首転がし https://estar.jp/novels/26122649 89cc5f7b-b785-4faf-b4cf-9da10f61f737 ⚫︎アズマ:・タイトルからして恐ろしいこの作品、書こうと思ったきっかけはありますか? ⚪︎待井さん:この時の妄想コンテストのテーマが「雨よ降れ」ということで、頭に浮かんだのが雨の降る川原で遊ぶ少年たちとそれを見ている男性、というイメージでした。  最初は異形頭を書きたいと考えていたのだと思います。そこで、少年たちの頭がサッカーボールになりました。そして主人公である男性の頭はなぜか見えない。傘が頭なのかなぁと思ったけれど、違うな、たぶんそこに頭はないのだな、と。  気付けばおさまるべきところにおさまっていない頭の部分が、そのまま子どもたちの足元で転がされていました。  映像や一枚の絵にした時に面白いものになっているか、ということを気にしているので、父親の生首をボールにして川原で遊ぶ子どもたち、というとんでもない絵になって満足しています。自己満足かもしれませんが……(汗) ⚫︎アズマ:他の作品にも共通することですが、恐ろしい描写が淡々と描かれており、最後まで登場人物達が有り得ない状況のまま普通に会話や行動をしているところに狂気を感じます。こういった点について、意識していることはありますか? ⚪︎待井さん:意識している、というのとは少しずれますが、恐怖は静かに語られたほうが美しい、と考えているのかもしれません。今回質問をいただいて、そういう好みがあるのかもしれないと気づきました。 「ぎゃー! 怖いー!」と登場人物が叫ぶようなエンターテイメントな恐怖を書くよりも、物を静かに語るほうが向いているのだとも思います。  この物語は異空間というか異次元というか、現実世界ではないような場所で起きている話なのだと自分では考えています。  その異常の中に在って登場人物が何を感じているのか、何のためにその状況になっているのかを掘り下げようとしたところ、淡々と、有り得ない状況がただ続いていく……というものになりました。 ⚫︎アズマ:この作品は経験しようがない話ですが、生首を蹴飛ばす描写はとてもリアルです。どうやったらこんなふうに書けるんでしょうか。もしかして、生首を蹴ったことがありますか? ⚪︎待井さん:あったら大変です(笑)  想像でしかありませんが、リアルに書けていたならば嬉しいです。 ⚫︎アズマ:こういった作品は、「奇をてらった作品として読者の注目を集める」という目的で書く人もいると思いますが、そのあたりはどうですか? ⚪︎待井さん:奇をてらうつもりで書いてはいないのですが、生首を出した時点でウケ狙いっぽくなってしまうなと反省しています……。  この作品を書くまでにもいくつか生首を書いてしまっていたので、「生首転がし」を書いた後はもう生首に頼るのはやめよう、と考えました。  実際に書いてみると分かりますが、生首、便利なんです。どこに置いても違和感しかありません。  基本的に何を書いても人様の注目を集めるというようなことがないので、あまりそのあたりは気にしていないです。思い付いたものをただ書くばかりです。 ⚫︎アズマ:違和感を書くことと、違和感のまま書き切ることは次元が違います。「生首」という道具をただ作中に取り入れるだけなら誰でも書けますし、それこそただの「気をてらった」作品になります。その道具をストーリーの中に配置してそのままの世界観で書き切ることは、本当に実力ある人しかできません。
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