⑤神成り

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⑤神成り

⚫︎アズマ:いよいよ待井さんの生首作品紹介も最後です。5作目はこちらの小説です。 神成り https://estar.jp/novels/25973596 efe80c14-e36f-45b8-b9f9-3398cdf31e94 ⚫︎アズマ:こんな現実離れしたストーリーが出来上がるに至った思考回路を教えてください。 ⚪︎待井さん:アイディアがなかなか出てこなかった時に、「誰でもいいから何か単語を1つ下さい」とお題を募集したのがきっかけです。  そうしたらはやくもよいちさんが「ぼんのくぼ」という単語を下さいまして……いや、ぼんのくぼ!? ぼんのくぼってそもそも何!!? と調べてみたところ「うなじの中央のくぼんだところ」と出まして。  ぼんのくぼの正体がわかってもそれをどう料理すればいいのか、悩みまくりました😅  ただ首を書いたのでは「ぼんのくぼ」を書いたことにはならない。最終的に、「窪が淵になる」という描写があればぼんのくぼという単語を生かしたことになるのでは、と辿り着きました。  その結果、水が滴ってきてくぼみに溜まり、「もはや窪というより淵であろう」という文章になりました。  内容に関しては、「自覚なく恨まれている側」の話を書こうと考え、あのようになりました。  恨んでいる側(弟)の台詞や心情を一切書かずに、その行動のみを書くことによって、計り知れない憎しみや感情の深さを表現しようと思いました。  台詞の一切ない物語にしよう、というのも決めていました。 ⚫︎アズマ:待井さんは、現実世界をリアルに描くのではなく、非現実的な世界をリアルにしてしまう筆力をお持ちだと思います。現実ではあり得ないものを描く時、もしくは現実ではあり得ないものを頭にイメージする時、何か心がけていることはありますか? ⚪︎待井さん:これは現実にあり得るものを書く時・あり得ないものを書く時の両方なのですが、視覚や嗅覚、触覚などの五感に訴えるように書けたら、とは考えています。  現実的だからこう書こう、現実的ではないからこう書こう、という風に分けてはいないです。  作品内の世界の光の強さなどもイメージしているかと思います。彩度や明度ですね。  あくまで自分の中でのイメージなのでそれが文章に表せているかは分かりませんが。「神成り」の場合は彩度が低めですが、淡くならない程度、といったところでしょうか。  あとは温度も気にしていることがあります。この作品内の温度は低めですね。 ⚫︎アズマ:待井さんの作品を読むと、体のある部分が失われていく、というストーリーが多いのですが、これには何か理由がありますか? ⚪︎待井さん:これはまったく意識してなかったです。言われてみて「そういえばそうかも……」と気づきました。  欠落していく、ということに対して、小説の題材として惹かれているところがもしかしたらあるのかもしれません。  何だか色々と考えなしに書いてることが多くて反省するばかりです💦 ⚫︎アズマ:考えなしにこれほどの狂気の作品群を書ける方が恐ろしい才能だと思いますが……。  作家さんの中には、読者を怖がらせてやろうとか驚かせてやろうとか、明らかに狙っているんだろうなと透けて見えることがあります。ただ、待井さんは、そういった狙いもなく、純粋に面白いものを書こうとしているのかなと感じます。作家にとって永遠のテーマだと思いますが、読者のために書くのが正しいのか、自分が面白いと思うものを書くのが正しいのか、意見をいただければと思います。 ⚪︎待井さん:ありがとうございます! そんな風に言っていただけるとは……!✨  これは、どちらが正しいというのはないのではないかな、と思っています。  何を目的としているか、どこを目指しているかによって違うだけではないかなと。  公募でデビューを目指すのであれば、傾向と対策を練って、ターゲット層の読者の方のために書くのが一番良い方法だと思います。  趣味として突き詰めたいのなら、自分の好きなものをめいっぱい書くのが良いのではないかなと考えています。  私の場合は、頭に浮かんできた世界をどれだけ忠実に外側の世界に引っ張り出して文章に繋ぎ止められるかばかりに気を取られているような現状です😅 ⚫︎アズマ:それでは最後の質問です。待井さんにとって、最高の小説とは何だと思いますか? ⚪︎待井さん:文章に不足も余剰もなく、けれど余情がある。そして読みやすく平易でありながら流れるように美しい。それが最高の文章であり、それを駆使して描かれる小説が最高の小説だと思います。
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