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出てきた出鱈目
あれから、3日、島原は勘解由小路を待ち続けた。
志保は多分、相当怒っているだろうが、一応、これも刑事としての本分であるし。
用意された、懐かしい豪華な食事を摂って戻ると、おかしな来客があった。
「そこの、よう解らん妖魅!それあたしのものネ!さっさと返すヨロシ!」
また妙なのが、三田村氏とカメラを取り合っていた。
「あの、貴方は?それは、私の友人なのですが」
「あ?オタク何アルか?」
手帳を開いて、島原は言った。
「日本警視庁の、島原雪次です。貴方こそ、どちらの?」
「アイヤー!日本の公安さんか!あたしは太乙真人。崑崙山の仙人アルよ」
また、妙なのが。
「それよりお前!あたしの社稷機返すアル!さもないと九竜神火罩食らわすアル!イヤイヤ首振るのヨロシないよ!」
「太乙真人。姜子牙の朋友とお見受けしました。この、人を消すカメラは、貴方が?」
「よく知ってるアルな。これはまあ、女禍の奴がホルホルしてたんで、ちょっとその先に行ってみたアルよ」
ホルホルって。韓国語では?
「ああ、そのカメラで、3日前、私の同僚が消されてしまったようで。どうやったら出られるのですか?」
「あああ?!そりゃあ無理アル。金閣が、ヒョウタンの蓋外した状態で、「行くぞ銀閣!」で銀閣が「おう!」つった時の状況アル。お友達のこたあ諦めるヨロシ」
何を言ってるんだ?こいつは。
その時、急に三田村氏が、面を外していた。
面を外した三田村氏は、恐ろしい霊気を振り撒く、初老の執事の姿をとっていた。
「こ、この恐ろしい霊気は?!」
「お待ちなさい。大陸からいらしたお客様。お茶でもいかがでしょう?」
「酒しか飲まねえアルよ?あたしは。っておおおおい!山河社稷機が!落雁になっちまってるアル!」
太乙真人が手に持っていたカメラが、落雁に変わっていて、えらいたまげていた。
「島原様。貴方もお気付きでしょう。ご主人様が、遂に我等の魔丞、魔上皇ととなるこの瞬間を。ご主人様に仕え、お役に立つのが我が使命でございます。ちょうどいいタイミングと存じます。おや?カメラの蓋が開いております」
は?カメラのフィルムの蓋が開いて、そこから、当たり前に勘解由小路が飛び出してきていた。
「よし。出てこられた。ああ、お前が太乙真人か。面倒なんで、出る方法くらい考えとけよ」
太乙真人は、宇宙の一部と化していた。
ボンヤリしていた小鳥遊が、ふと、現実に気付いた。
「お、お助けえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!ああ師父!このおっさんどうにかしろおおおおおおおおおおお!!でゲス!何黙ってんだ?!アルナシハッキリしろやあああああああああああああああああ!ってげえ?!」
「よーし、帰ってきたから続きだ。孕むまで突っ込んでやろう。覚悟はいいか?」
「ああああ!師父うううううううううううううううううう!」
小鳥遊の襟首を掴んで、勘解由小路が、
「じゃあ、俺の部屋ダニンガンな?さっさと眼鏡んちに帰って怒られてろお前は」
怒りに震えた島原は、家を追い出されそうになっていた。
家の外で、同じように追い出された太乙真人が、
「なあ、この辺に、美味い紹興酒出す店って、ないアルか?」
「知らん!中華料理屋にでも行け!」
「それが、本物の中華料理か解らねえアル。インチキ中国人とかって可能性があるもんで」
お前が言うな。本当に。
アッサリ事件を解決してしまった勘解由小路に、島原はしばし呆然とし、家に帰って志保に怒られた。
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