被疑者消失

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被疑者消失

 勘解由小路のリムジンが、瀟洒なマンションにたどり着いた。 「確か、6階に部屋があるはずだ」 「6階かあ。面倒だ、誰か負ぶってけ。おう三鷹さん頼むぞ?」 面付きの悪魔に負んぶされているって、一体。 「おい、コッソリ何を触っている?」 「ああまあ、時折な?鹿野山さんほどじゃないが。ああ三鷹さん。息荒いぞ?ほれほれああ先っちょが硬くなってるぞ?」  何をやっているんだ?  そのまま、エレベーターホールに向かうと、柱の陰に人影があった。 「あん?何だよ、ここにいたじゃないか。川藤隆だっけ?寄っかかってないで出てこい。聞こえないのか?警察だぞ?JKビジネスの元締め気取りのチンピラを、保護しに来たんだ文句あるか。おい、お前」  話している内に、何かに至ったらしい。三鷹さんから降りて、勘解由小路は川藤らしき人物の腕を引っ張り、こちらに引き寄せた。  川藤の体は、ちょうど柱の陰から、綺麗に縦に切断されていた。 「勘解由小路!これは!」 「ふん。もう動いてたな」  川藤の体を、引きずり出して突き飛ばした。  体の大半を失っていた川藤の遺体は、エレベーターホールの真ん中に倒れ込み、地に落ちる寸前で、煙のように消えた。 「勘解由小路!」  訳の解らない現象。怪奇を前にして、最早島原には、相棒の名前を呼ぶことしか出来なかった。 「ああ、島原、念の為、物陰に隠れておけ。その柱だ。ああ、それでいい。通報しとけ」 「よく解らんが、我々を攻撃する気配がないのは、何故だ?」  言われた通り、柱の陰に身を潜めつつ聞いた。 「警官は狙わんさ。あくまで、対象は犯罪者だ。俺?ヤバいんで、エレベーターホールから完全に身を隠している」  自覚はあるのかこいつ。 「それにしても、方法論含めて面白い事件だ。俺の復帰戦に相応しい」  大量の血溜まりに彩られて、悪魔使いは不敵に笑っていた。
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