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同調
夫婦は顔が似る。物理的に。
ある日突然、婚姻届を提出した夫婦の顔が足して二で割ったようにそっくり同じになる現象が起きた。
原因は不明。何の因果か分からないが、離婚届を提出すると元の顔を取り戻した。今や婚姻制度はこの現象と結びつき、切り離せないものになった。
その上、結婚後に授かった子供も同じ顔になることが確認されている。これは親が離婚しても子が自ら婚姻関係を持つまで固定される。つまりDNA検査をせずとも血縁関係を証明する。
人々はこの現象を『同調』と呼んだ。
『同調』以降と以前を比較して、社会は大きく変わった。
婚姻が『同調』と結び付くようになってからも、旧来の婚姻形態を続けたい人間は後を絶たない。即ち、顔を変えずに婚姻関係を継続することだ。
政府はこういった需要に応えるため、一部の地方自治体で導入されていたパートナーシップ制度を全国に広めた。
一方、結婚を望む人たちの間で格差が広がった。婚姻が『同調』と結びついてしまったがために美男美女同士の結婚の割合が九割を占め、結婚するため整形に巨額の金を注ぎ込むことが必要になった。
即ち、結婚は容姿か所得の良い者の特権と化し、結婚できること自体がステータスとなった。
これから紹介するのは街頭インタビューで得られた貴重な体験談である。
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