同調

6/11

11人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
「『同調』には感謝しています。そのお陰で私たちはパートナーになれた訳ですから」  そう語るのはEさんとFさん。二人はパートナーシップ制度へ登録した同性カップルです。部屋には半年前に挙げた結婚式で二人がウェディングドレスを着た写真が飾られています。 「『同調』が起きなければパートナーシップ制度の導入は数十年遅れたことでしょう。いつだって多数派に不利益があると分かった時だけ(対応が)早いですからね」  『同調』の発現によってパートナーシップ制度の整備は急速に進みました。それまで日本のパートナーシップ制度はあくまで自治体が主体のものであり、家族と同等と認めるものの法的効力はなく、様々な問題がありました。  受けられない権利の例として挙げられるのが、配偶者控除、相続税の優遇措置、相続権、遺族給付金の受給、外国籍のパートナーの在留資格、特別養子縁組など。  フランスのパックス婚を参考に再整備した結果、税制上のメリットは婚姻と同様となり、外国人パートナーに居住権を付与。フランスとの違いは貞操の義務があり、不倫がパートナーシップ制度の解消の理由として扱われること。概ね婚姻制度に代わるものとしてパートナーシップ制度は広がり、同性カップルもその恩恵を受けることとなりました。 「脱毛とかもそうだよね、男性がやるようになったら痛み止めの麻酔が導入されるようになったとか。いつも無視されるんですよね女の痛みって。妊娠出産が顕著だけど」 「バイアグラが保険適応で無痛分娩が保険適応じゃないのは意味が分からない。アルツハイマー症を遅らせる薬が保険適応で不妊治療が適応じゃないとか。政治家って男性と老人ばっかりじゃないですか。自分たちの利権しか考えてないんですよね」 「私たちは女に産まれて、その上同性のカップルという少数派ですけど、お互い尊重できるパートナーが欲しい、結婚式でドレスを着たい、そんな普遍的な願望を持つ一人の人間です。少数派にとって生きやすい世界は多数派も生きやすいはずです。今ある制度もゼロから作られたものです。一度偏見を捨て去って、一から作るならという視点を政治家の方には持ってほしいです」  お二人が今政府に望むことを教えてください。 「本当はパートナーシップじゃなくて結婚したいです。『同調』したいんです。『同調』が異性カップルだけのものになっているのが納得いってないです。それに私たちが子供を持つとなった時、血縁関係にない方が親権を持てないのをどうにかしてほしいです。愛する人との子供が欲しい、二人で育んでいきたい。それだってごく普通の願いだと思います」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加