同調

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「愛があれば顔が変わっても問題ないですよ。だって愛しい人の顔に近付く訳ですから」  そう語るのはGさん。Gさんは今年銀婚式を迎えました。  『同調』が始まったのはお二人が結婚されて随分経った後ですよね? 戸惑いはありませんでしたか? 「そりゃあ戸惑いました。昨日まで見ていた顔と今日見ている顔が違う訳ですから。でも今となってはこれが普通です。夫婦は顔が似るって、昔から言うじゃないですか。だからいつかこうなるんだなって、しっくりきたんですよ。もう元の顔がどうだったか、写真を見ないとわからないです」  そう言ってGさんは壁に掛けられた写真を眺めた。二人が出会ってから毎年写真を撮り、壁に飾っているのだと言う。  一番初めの写真と現在の顔の造形は異なるが、二人の笑顔はとてもよく似ている。 「今は(結婚が)顔を良くする、ステータスを上げるために利用されることもあります。でも結婚って愛あってのものじゃないですか。我々はどちらも目を見張るほどの美人という訳ではありませんから、二人で歩いていると時に若い人から変な目で見られますけど、顔だけで私たち夫婦の愛は測れないでしょう。今は結婚は社会契約の一種と思われ、愛が懐疑的に捉えられているような気がします。愛とは本当に猥雑なものなのでしょうか」
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