乙音の過ち

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「おかえり。」 「あの...私…」 「そんなに警戒しないでよ。」 「だって.../」 「もしかして、期待してる?」 世那はバスローブ姿の私に近づき、紐を解いた。 「そんなことは//」 「ないの?全く?」 私は世那の視線に耐えきれず、目を逸らした。 即答できない自分が憎い。 「んはっ、こっちおいで?髪乾かしてあげる。」 「う、うん。」 「あれ?別の事の方が良かった?」 「そんな訳ないでしょ/ばかっ//」 「なーんだ。」 「でも、今日は来てくれてありがとう。」 「乙音さんって、そういう所がずるいよね。」 すると、世那は私を抱きしめた。 「世那くん、痛い。」 私の言葉は聞こえているはずなのに、更に、世那は私を強く抱きしめた。 「こんなに近くに居るのに、なんで乙音さんは俺のものじゃないの?」 「世那くん...」 顔を上げると、真剣な目で私を見つめる世那が居た。 こんなにも真っ直ぐな視線を向けられたのはいつぶりだろう。 私はそっと彼の頬に触れた。 私は最低だ。 こんな時に気づくなんて。 私が本当に求めている人は、直哉じゃないということに。
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