牽制

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俺は部屋に戻ると、ベッドに寝転がり天井を見上げた。 脳裏に乙音の顔が過ぎる。 兄貴も乙音もいい大人だ。 付き合っているのなら、身体を重ねることくらいするだろう。 頭では分かっている。 だけど、乙音の声を、表情を、独り占めしている直哉に、理不尽な怒りがわく。 さっき、俺が付けたキスマークは3日もすれば消える。 当然、旅行の時にはなんの効力も発揮しない。 分かっているのに、せめて、今夜だけでも兄貴と寝て欲しくない。 「くそっ」 だから、恋なんてしたくなかった。 醜い嫉妬と、怒りをどうやって鎮ればいいのか俺には分からない。 そんな時、隣の部屋から直哉と乙音の笑い声が聞こえた。 楽しそうに談笑する2人の声を聞きたくなくて、俺はイヤホンで耳を塞いだ。
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