牽制

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イヤホンから曲が流れる。 皮肉にも、叶わない恋を歌った曲。 だけど、相手のことが好きで気持ちを抑えきれないという歌詞。 今の俺のことを歌っているかのようだ。 ただ、乙音を優しく抱き締めたい。 それだけなのに。 諦めないといけないことは分かってる。 でもそれが出来ない。 それくらい乙音のことが好きだから。 その時だった。 コンコンコン…… 俺の部屋をノックする音が聞こえた。 イヤホンを外し、俺はそっとドアを開けた。 そこには乙音が立っていた。 俺は何も言わずに、彼女を部屋に招き入れた。 「兄貴は?」 「寝た。最近、直哉くん、仕事で疲れてるから。」 「へぇ。それで俺と続きがしたくて来たんだ。」 「違う!」 「しー。兄貴が起きるよ。」 俺はベッドに腰掛けた。 「やめて欲しくて。私に触るの。」 「それで来たの?」 「それ以外、何があるのよ。」 「なんだろうね。」 俺は悪戯な笑みを浮かべた。
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