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背徳のキス
「何言ってるの/離して//」
「嫌だって言ったら?」
「噛み付くわよ。」
「どうぞ。」
俺は乙音に右腕を差し出した。
「世那くん、どうかしてる...」
「んはっ、今頃気づいた?」
「なんで私に構うの?」
そんな事、好きだからに決まってる。
俺はその気持ちを押し殺し言った。
「寂しそうな顔してるから。」
「私が?」
「そう。違う?」
「寂しくなんて...」
俺は乙音を抱き締める腕の力を弱めた。
「今なら逃げられるよ。」
「……」
すると、乙音は俺の腕を強く掴んだ。
「噛みつかないの?」
「噛みつかない。」
「どうして?」
「どうしてだろう。」
「俺は理由なんてどうでもいいけどね。」
「最低。」
乙音の言葉が胸に突き刺さる。
だけど、俺の目的は果たされる。
乙音の1番嫌いな男になって、彼女の心に棲みつく。
好きよりも、嫌いの方が心に深く刻まれるのなら俺はそれでいい。
「最低か。褒め言葉だな。」
俺は乙音の唇にそっとキスをした。
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