ちゃいにーず 其から

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ちゃいにーず 其から

龍紀からの手紙の書出しはこうだ。「悪性の腫瘍が転移しました。 隣家の年寄りで一人暮らしの白雪姫のまま母なクソババア[笑]な未亡人の、嫁いびりができないから、若さや処女(おとめ)への激しい嫉妬で、違法だけど、ハクビシンやカラス退治の熱線や磁力をずっとをずっとあび続けていたから。胃はえずくし、黒目や顔まるごとや全身の皮膚がひりひりやかれていました。 白蟻駆除の熱線をずっとあび続けていたから。 目蓋や黒目や唇や股がじりりっと焼かれていました。 だから、こんな浸潤癌という病気になってしまいました。でも私、病魔と闘うから、何時までも優しくて親切な虎紀ちゃんでいてね。病気が治ったら一緒にコウさんのコンサートに行こうね」 で、手紙は終わっている。龍紀からの最後の優しさ溢れる言葉に、虎紀は後悔した。 親類の角が2本生えたおねーちゃんが、胃と腸のパイプがつまっていて、三仙という漢方薬を服用していたのに、身体が弱かったのに。なのに、どうして龍紀に辛くあたった?もう今はいない親類のおねーちゃん[平昌オリンピックも見れずに八年の闘病で逝った]のと龍紀[北京オリンピックも見れずに四年の闘病で逝った]の事を考えて虎紀は泣き出した。大きな声で、人目も気にせずに、街のど真ん中で。うわーんうわーんと涙をこぼした。 虎紀が龍紀に辛くあたった本当の理由は。 コウさんも龍紀も一番に虎紀を想っていて欲しいとのいつの間にかわいた独占欲は我が儘な嫉妬。 だから虎紀はお経の代わりに、龍紀のお墓の前で、アカペラで空に向けて『かたちあるもの』 『月のしづく』を、何度も繰り返し歌うのであった。 了
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