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レトロ
最高級のパテシエを目指す男勝りな覆面女パテシエが立食パーティに潜んでいた。
彼女は世界の天辺を目指していた。どうしても、この業界でトップになりたかった。だって、トップの方が格好いいから。
だから顧客のニーズを探るべく自分が開発したスイーツには、どの様に客が反応するかを見たくて覆面パテシエをしてた。
そこには、美しい少女が立っていた。
パーティで待ちぼうけをくらう黒髪のサイドテールとよくあった黒のドレスの素敵な娘
。ダンスをエスコートする約束にと貰った薔薇の一輪を大切に胸に掲げ、強迫観念にとらわれ、花びらを1枚頬ばるかどうか彼女は考えあぐねていた。
その時背中に誰か悪気の無い人がぶつかって薔薇一輪が床に落ちてしまう。拾おうとした彼女の数歩手前で、また押されてきた悪気の無い別の人の足でソレは踏みにじられる。
「もし、私とダンスしてくれるのなら」その薔薇を大切に胸に掲げておいてくださいねと言葉を残した男性が急用から戻り笑顔を見せかけ、無惨な花を見て「失礼しました」とツカツカと彼女の目の前を歩き去った。
彼女の2の目頭が赤くなり綺麗な体液が頬を伝った。そんな彼女を見て覆面パテシエは「お嬢さん。どうか笑ってください」と生クリームで百合の形をモチーフにしたショートケーキを差し出した。彼女は「ありがとうございます」と言って少しずつケーキを崩して食べた。「おいしかった」という少女の言葉と上品な笑顔にパテシエの心には恋が走った。
了
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