3人が本棚に入れています
本棚に追加
レトロ その後
長年現役のデザートの保冷用の小箱をみつけ、
二人は「覚えてる?」とくすくす笑った。
あれは十年前。
パテシエは成人式の会場からサイドテールの彼女を一時、寒い外へと連れ出した。
保冷用の小箱[「まだ使ってたんだ?」「当たり前だろ大切な記念品なんだから」]を差し出す。
「サプライズ!」
苺の果肉が赤い薔薇のシャーベットが目に映る。初めて会ったあの時を思い出す。
「食べたかったんだろ?食べていいよ!早く食べないと溶けちゃうよ」とパテシエは照れ隠しの様にまくし立てた。
「ねぇ」寒いねという彼女は「知ってる?赤いバラの花言葉」と顔を赤くして聞くから「あなたを愛してます」とパテシエも赤く顔を染めながら言った。
「良かった。こんなの要らないって投げ捨てられなくって」というパテシエに「そんな事するわけない」と彼女。
するとパテシエが話す「シャーベットは成人式おめでとうの為に、特別研究して作ったんだ」と、で、「振り袖や袴じゃなくってあの日のドレスだね。
寒くない?けど似合ってるよ。綺麗な髪はあの日とは逆に結ったんだね」と言うと、わかる?
「げんかつぎなの」パテシエの車の中でシャーベットを食べ、彼女は会場へ「成人おめでとう」を終えに戻った。
そんな過去を振り返った二人は仲良く体と体を寄せあった。
了
最初のコメントを投稿しよう!