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毒と優雅
ボクは水族館で、目撃した。
彼女は銀幕のスタアの様なつばの広い帽子をかぶっていた。
髪型もモガ?で合っているだろう。そしてその帽子は、よくよく不躾に見ると海月をモチーフにしてる事がわかる。
海月と言えば、まず思い浮かぶのが、秋の海に大量に漂い、毒を持っているという事なのだが、彼女は何にリスペクトしたのだろう?
嗚呼、水族館の海月は優雅で幻想的でもあるなと思ったその時、彼女がツレの女子の手を振り切りバックから取り出したルージュで頬に大きくばつを描いた。
「これであんたにあげる事も無くなるから」リップクリームしか着けてない唇でコクった相手にとびこんできな。と、恋ばなをしだした。
すると、内気に震えていたもう一人の彼女が、街中で、いきなりカミングアウトした。「違うの。そのルージュが欲しいの」と言って「間接頬っぺたちゅーだね」と笑いながら右手を差し出す。
「馬っ鹿、これから彼氏に会いに行くんでしょ」と彼女は頭を抱える。「うん」「だったら」この恋の告白プレゼントにする予定だったルージュは必要ないわよね、と彼女。
「だから、彼氏に会いに行くという発想が間違いなの」「私は好きな女子がいるからお断りにきました」と言ってルージュの唇を見せびらかす予定だったんだよと彼女。
その答えを聞いて海月女子は膝カックンと歩道に脚を着いた。「馬っ鹿」と海月フリルで隠す頬は少し赤くなっていた。ずっと見てた、ボクもどきりとした。
了
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