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「先輩ってば、またマウスを孵卵して。うわ、生暖かくてやだなあ」 「オレの父性を否定するのか。影川こそアニメグッズを仕事場に置くなよ」 ペンギンは、僕のデスクに飾られた、大正風の男女が描かれたアクリルスタンドをつついた。 「知らないんですか先輩? これは、『ぼくコン』といって、総PV10億越えの小説で、アニメの円盤も超売れた、キュン死必至の糖度最強恋愛小説でー」 「興味ねえよ。それより建山さんの案件は、もう印刷所に投げられるのか?」 「先輩、これ僕の辞表です」 「何? 納期変更なしで、24ページのパンフレットの画像とレイアウトを大幅修正? 建山さん新人を殺しに来てるな。やはりか……」 ペンギンは白い縁取りの目をぎょろりと僕に向け、椅子に掛けた僕の膝に、ドン、と収まってきた。そのまま真っ赤になったカンプのお戻しを読んでいる。 ペンギンってふわふわそうで、人によっては、かわいー、などと思うかもしれない。全然違う。 なんか脂っぽくてベタベタして、ちょっと磯臭くて、ゴムみたいな肌触りだ。あと重い。 「所詮僕は、ドロップシャドウ多用のうんこデザイナーです」 「いや……多分この件は、影川のセンスの問題じゃない」 「じゃあ何が原因だっていうんです?」
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