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「それでペンペン先輩。建山さんは、どこの会社の株を持ってるんですか?」
「さあ。でも機嫌が悪いってことは、今日の値下がり率上位の株だろ」
僕は、見慣れないmohooファイナンスのページを、たどたどしく確認した。
「値下がり率トップは……ビルド建設ですね。うん? どこかで聞いた名前……」
「ビルド建設って、建山さんの会社じゃねえか! 建山さん、自社の株買ってるのか。愛社精神あるな。しかも見ろよストップ安だ。そりゃ機嫌も悪くなる」
先輩が教えてくれたことには、ストップ安とは、その日それ以上その銘柄の株価が下がりようのない状態になっていることを表す言葉らしい。
「ビルド建設の株は現在、4185円……。たしか株って、誰かが買ったら、株価が上がるんでしたよね」
「買う気か? 株は、基本的に百株が一単元だぞ」
4185円×100。
約42万? この会社の手取り、10万切って……
先輩がなまぐさいフリッパー(ヒレ)で僕の胸を慰めるように叩く。
「諦めろ。個人が手を出しても、大局は変わらない。フォーリン=ブォフェットみたいな影響力があるやつが買わないと、マーケットは動かねえよ」
「ブォフェット?」
「投資の神様だ。割安株の長期投資で莫大な富を得たんだ。日本株では商社株がお気に入りらしい。ブォフェットは生ける福の神だ。彼が日本株を買うと、便乗買いで日経が上がる。それより、ビルド建設を買うくらいなら、将来有望そうな、この値上がり率一位のA Iインテリジェンスとかを買ったほうが――」
「わかりました、これはやりたくなかったのですが、禁じ手を使うしかないようですね」
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