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「何だよ影川、そのこじらせヒーローみたいな台詞」 僕はおもむろにメールを一通、書き上げて送り、再び地獄みのあるデータ修正に没頭した。 この事務所のPCはどれも、キーボードの⌘と、X、Z、Sのキーが削れている。ペンギンになる前の先輩は有能なデザイナーだった。 ペンギンと成り果てた先輩に、昨今お高い生サバを買ってあげられるのは、唯一の従業員である僕しかいない。 2時間後、mohooファイナンスを見ていた先輩が悲鳴を上げた。 「運がいいぞ影川! ビルド建設がプラ転した!」 「プラ転?」 「株価がプラスに転じてきたってことだよ。なんでも、話題性のある仕事を受注したらしい」 「ふうむ、開示にけっこう時間かかりましたね」 「は? 何か知ってるのか影川?」
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