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なじみのインド料理店「ヤクシャラージャ」のカレーを頬張ると、眠たい頭の中が、刺激でぱちぱちはじけた。 柔らかく煮込まれた舌触りのいい豆が体に吸収されると、心地よい汗が噴き出す。 ここのカレーは、本場の料理人が作っているという話だ。チャイを運んできた眼光鋭い女性店長も、彫りの深い顔立ちをしている。 「先輩もう終わりです。いろんな意味で。マーケットに対して切れるカードがない」 頭を抱える僕に、対面に座った先輩はフリッパーでテーブルを軽くたたいて見せる。 「影川よ、我々はトレーダーじゃない。デザイナーだ。画像の補正は終わったんだ、着実に進展してる。何としても残り3時間半でレイアウトを組み直すんだ」 「先輩はいいですよね、尻尾をプリプリして小首を傾げると、生サバ貰えるんですから」 「グアー」 先輩は悲痛に鳴いた。 先輩に当たるなんて、なんて嫌なやつなんだ僕は。先輩も、好きで、可愛くて無力なペンギンになったわけじゃないのに。 僕は気を引き締めるために、あらためてメニュー表に目を落とした。
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