第3話

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第3話

時は、9月8日の朝10時半頃であった。 場所は、家の中にある浴室の脱衣場兼洗面所にて… この時間、家の中にはマヤひとりがいた。 マヤは、家族たちが出した洗濯物を日立のドラム式の洗濯乾燥機の中に入れようとした。 この時であった。 マヤは、しゅんすけが使っていたスイミングスクールのカバンの中に入っている洗濯物を取り出すためにファスナーをあけた。 そしたら… マヤは、しゅんすけのカバンの中から小学校6年生の男の子がバッジテストで合格したあかしの金のバッジ(一級)を見つけた。 バッジを見つけたマヤは、大急ぎで洗面所から出たあと電話機が置かれているコーナーへ行った。 マヤは、ハウディ(プッシュホン)の受話器を手に取ろうとした。 しかし… ………… とつぜん右手が凍りついたので、受話器をあげなかった。 こわい… こわい… だけど… 急いでスイミングスクールに知らせなきゃ… だけど… しゅんちゃんがバッジを盗んだことが周りに知られたらこわい… しゅんちゃんのおとーさんは今… 大事な時期だったわ… 男の子が苦心して獲得したバッジをしゅんちゃんが盗んだことが知られたら… しゅんちゃんのおとーさんは… 会社をクビになってしまう… 大パニックを起こしたマヤは、冷静にものごとを考えることができなくなった。 その結果、マヤはとんでもないボウキョに出た。 それから数時間後であった。 またところ変わって、下関市乃木浜(しものせきのぎはま)にある海水浴場(ビーチ)にて… マヤは、あたりをキョロキョロと見渡したあと個室トイレに入った。 (ポチャン…ジャー) マヤは、様式トイレの水たまりの中に金のバッジをすてたあと水洗コックをひねった。 金のバッジは、近くにある浄化槽に流れ落ちた。 マヤは、個室トイレから出る前にあたりをキョロキョロと見渡した。 誰もいないことを確認したマヤは、個室トイレから出たあと駐車場へ向かって走った。 その時であった。 (カシャカシャカシャカシャカシャ…) この時、マヤが個室トイレから駐車場へ向かって走っていく様子を何者かがカメラで撮影した。 カメラで撮影した人物はだれか知らないが、夕刊(タブロイド)の記者だったと思う。 撮影した人物は、その後もマヤをしつように撮影した。 時は、夜7時半頃であった。 またところ変わって、家の大広間にて… 大広間のテーブルに武昭(たけあき)としゅんすけとこうすけ以外の家族たちが集まっていた。 こうすけは、バイト仲間たちと一緒に小倉へのみにいった… しゅんすけは、今も行方不明のままであった… 武昭(たけあき)は、大学時代の後輩の家にのみにいった… …ので、食卓にいなかった。 テーブルの上には、マヤが作った晩ごはんが並んでいたが全部近所の家のお残りを集めて作った料理であった。 テーブルに集まっている家族たちは、ものすごくつらい表情を浮かべながら晩ごはんを食べていた。 この時であった。 千景(ちかげ)がものすごく怒った声で家族たちに言うた。 「みんなに大事なお話があります!!」 「あとにしてくれ!!」 千景(ちかげ)が言うた言葉に対しててつしが怒った声で言い返した。 千景(ちかげ)は、なまいきな声で『大事なお話があります!!』と言うたので、てつしが思い切りブチ切れた。 「ふざけるな!!」 思い切りブチ切れたてつしは、千景(ちかげ)に対して小鉢を投げつけた。 千景(ちかげ)は、泣きそうな声で言うた。 「てつし!!なんでものを投げつけたのよ!?」 「あんたがクソナマイキな声で言うたから投げつけた!!」 「なんでそんなにガーガーガーガー起こるのよ!?」 「だまれ!!だまれと言うたらだまれ!!」 「おかーさんは今のうちにお話がしたいから言うただけなのに…」 「だまれ!!老いては子に従えと言うのがわからないのか!?」 (ガーン!!) てつしは、ものすごく怒った声で怒鳴りつけたあと右足でテーブルをけとばした。 その後、てつしはプンと背中を向けた。 この時であった。 (ピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロ…) 大広間に置かれているハウディ(プッシュホン)の着信音が鳴った。 「出ます…」 マヤは、受話器を手にしたあと話し始めた。 「もしもし…福角(ふくずみ)でございます…そうですか…分かりました…後日、おくやみにうかがいます。」 マヤは、受話器をおいたあと大きくため息をついた。 千景(ちかげ)は、心配げな声でマヤに言うた。 「マヤさん。」 「おばさま。」 「どなたが亡くなられたの?」 「しゅんちゃんと同じスイミングスクールに通っている男の子が自殺したって…」 「自殺!!」 「うん。」 この時、友美がなまいきな声で言うた。 「あの子、スイミングスクールでしゅんすけをいじめていたわよ…人をいじめてばかりいたから金のバッジを盗まれたのよ…ザマーミロだわ〜」 「(むつみ、怒った声で言う)友美!!」 「だってほんとうのことだもん…」 千景(ちかげ)は、ものすごくおたついた表情で言うた。 「自殺した子は、久間(きゅうま)の家のご主人様の男孫(ひとつぶダネ)くんだったわ…」 むつみは、小生意気な声で言うた。 「ああ、たしかあの子のお母さまはええとこの令嬢(ハコイリ)だったと思う…久間(きゅうま)の家は資産家(カネモチ)だから過度に甘やかしてばかりいたのよ…」 背中を向けているてつしは、怒りをこめながら言うた。 「自殺した子の父親も浮世知らずのダメ男だったと思う。」 友美は、ものすごくナマイキな声で言うた。 「だからあの男孫(ひとつぶダネ)は大事なものをなくしたのよ…」 「(むつみ、ベーゼンとした声で言う)そうよね…そのとおりね。」 友美は、みそ汁をひとくち食べたあとこう言うた。 「あの男孫(ひとつぶダネ)は、学校の作文で『将来はオリンピアンになる…』と書いていたわよ…だけど、スイミングスクールで弱い子をいじめてばかりいたことがあからさまになった…オリンピアンになりたい子が弱いものいじめをした…自殺した男孫(ひとつぶダネ)くんを甘やかした久間(クソジジイ)もそのうち大事なものをなくすわよ…ホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホ…」 友美は、高飛車嗤(タカビーわら)いをしたあと食べかけのみそ汁を食べた。 (ピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロ…) この時、またハウディの着信音が鳴った。 マヤは、受話器を手にしたあと話した。 「はい福角(ふくずみ)でございます。」 この時、受話器の向こうから不気味な男の声が聞こえた。 「マヤ、久しぶりだな〜」 「あなた…あなたもしかして…」 マヤは、ひどくおびえた。 不気味な声の主は、竹宮豊国(たけみやとよくに)だった。 竹宮は、マヤの元カレだった。 またところ変わって、JR長門本山駅(ながともとやまえき)(JR小野田線の終点)のすぐ近くにある電話ボックスにて… 緑のカード式の電話機の上に10円玉が高く積まれていた。 やきそばヘアでももけた腹巻き姿で地下足袋(じかたび)をはいている竹宮は、ちびたえんぴつでメモ書きをしながら受話器ごしにいるマヤをおどした。 「おいコラ!!オドレきょうの日中、乃木浜(のぎはま)海水浴場(ビーチ)にいたな…オドレがそこの個室トイレに入ったところをオレは見たのだよ…オドレはあの中でなにをしていた!?」 (チャリンチャリンチャリン…) 竹宮は、10円玉を投入口に入れながらマヤをおどした。 「なんや…分かった…ほんならやめるわ…せやけどワテは…別の一件のことで怒っとんや…きょうの夕方に放送された(FNN)イット(ワイドニュース番組)で伝えられたニュースのことや…なんや、みてへんだと…オドレはニュースよりも2時間サスペンスの方が大事なのか…ふざけるな!!…もうすぐハンニンが分かるところだったから見なかっただと!!…おいコラ!!子どもだからこらえてもらえると思ったら大きなまちがいだぞ!!…きょうの夕方頃、新下関駅のコンコースで夫婦が通り魔事件に遭って亡くなられた事件が発生したのだぞ!!…亡くなられた夫婦は、久間(きゅうま)のジジイの跡取り息子の夫婦や!!…ジジイの跡取り息子の嫁さんは、出産を控えていたのだぞ!!…事件現場に、スイミングスクールの会員証が落ちていたのだぞ!!…それもな!!」 受話器ごしにいるマヤが『やめて!!』とさけんだので、竹宮は『チッ』と舌打ちしたあとこう言うた。 「まあええわ…これくらいにしとくわ…」 (チャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリン…) 竹宮は、10円玉を投入口にたくさん入れながら受話器ごしにいるマヤをおどした。 「マヤ、今からオドレに最終警告をしておく…子どもだからこらえてもらえると思ったらどうなるか分かってるだろな…オドレは13歳以下は刑事罰の対象にならないからザマーミロと言うてワテをぐろうした…司法が許すと言うてもワテはこらえんぞ…ワテの知人の知人のそのまた知人はどなたであるかと言うことは…オドレも知ってるだろうな…またそのうちにかけるわ…それまでに警察署(サツ)へ行った方がいいぞ…でなければ…どうなるか分かっているだろうな…ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ…」 竹宮は、ちびたえんぴつでメモ書きをしながら『ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ…』と(わら)っていた。 竹宮は、マヤと福角(ふくずみ)の家族たちに対してなんらかの弱みを知っていたのでさらに過激な行動に踏みきるおそれがあった。 受話器ごしにいるマヤは、ひどくおびえまくった。
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