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「少し地味じゃないか?」  ダリル王子は白いシャツにネイビーのパンツを身につけ、姿見の前で体を捻って隅々まで確認している。低い位置でまとめられた髪がたゆたうのが愛くるしい。 「今日の街コンは陛下に紹介されてデートする相手とは違います。ほとんどが平民です。華美にしすぎると浮いてしまいます」 「そうか、TPOをわきまえた身だしなみが大事ということだな。エリックは何を着ても様になるな」  薄いブルーのシャツに黒のパンツ。襟元を摘まみ、いい生地だな、と見上げられた。  この日のために、金と権力と後ろ暗いところを突いて迅速に作らせた甲斐があった。軍服以外でダリル王子と外出することなんて滅多にない。気合いも入る。 「今日こそ結婚相手を見つけるぞ」 「サポートいたします」  なんて言うとでも思ったか? こんなに近くで邪魔できるなんて願ってもないことだ。ダリル王子の結婚はなんとしてでも阻止する。私以外の相手なんて認めない。男も女も参加者全員私に惚れさせてやる。 「頼りにしているぞ、エリック」  肩をポンと叩かれ、あでやかな笑みを頂く。  扉を開き、ダリル王子の後を追った。  目の前を歩く後ろ姿を眺めながら、結婚なんて絶対にさせない、と確固たる意志に従う。
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