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「結婚相手は?」  扉が開くなり、陛下は玉座から立ち上がって目を丸くする。連れているのが私1人だから、困惑しているようだ。 「結婚相手のエリックです」  腕を組まれて感触や温もりに、全神経がそこに集まっているよう過敏に反応する。 「エリックと結婚? ヤダ」  陛下は体の前で腕を組み、そっぽを向いた。  ダリル王子の腕が解かれる。寂しく思っていたら、陛下の胸に手をつきしなだれかかった。 「ねぇ、パパ。俺ね、エリックと結婚したいです」  夜の蝶のように、極上の猫撫で声で陛下におねだりをしている。実の父親をたぶらかそうとしているダリル王子だって、いい性格をしている。普段は自分から『パパ』なんて呼ばないのに。 「ダリルのお願いは全部聞いてあげたいけど、エリックはヤダ」 「うちの息子の何が嫌なのかきっちり説明して頂けますか?」  父が陛下の肩に指を食い込ませる。痛い痛い、と陛下は父の手をタップするが、父は更に指先へ力を込めた。言うから離せ、と陛下が叫ぶと父は手を下ろす。 「だってさ、ただでさえダリルはエリックばっかりじゃん。結婚したらもっとエリックにベッタリでしょ? パパがヤキモチ妬くよ!」  陛下に嫌われていたわけではないからホッとする。  陛下の目から見ると、ダリル王子は私にベッタリなのか。おもわず口の端が緩んだ。 「くだらない嫉妬でうちの子を拒否するのやめて頂けませんか? うちの子、いい子なので」 「いや、いい子じゃねーよ」  すかさずダリル王子がツッコミを入れる。ダリル王子の結婚を邪魔してきた話をしたばかりだから当然の反応だ。 「陛下、ダリル王子との結婚を許して頂けないでしょうか?」 「ねぇ、パパ、いいでしょ?」 「子供の幸せを素直に祝福なされてはいかがですか?」  全員に言われ、陛下は肩を落として大きく息を吐き出した。 「エリック、ダリルをよろしく頼む」 「はい、ありがとうございます」  こちらに走ってダリル王子が飛びかかってきた。うなじで腕を腰に足を絡めるから、踏ん張ってお尻の下に手を回して抱きかかえる。 「やったなエリック」  チュッと可愛らしい音を奏でてキスをくれた。 「ちょっと待て! 結婚するまでキスも許さん」 「父上、俺は子供じゃなくて25歳の大人ですよ? 何をおっしゃっているのですか?」  満面の笑みを消し、陛下に冷ややかな瞳を向けている。 「さっきまであんなに甘えてパパって呼んでくれてたじゃん!」  陛下が地団駄を踏む。  ダリル王子をそっと下ろし、陛下に向かって頭を下げた。 「結婚を許して頂けたのです。陛下のおっしゃる通りにいたします」  10年待ったんだ。王子の結婚なら国を掲げて祝う。結婚までの数ヶ月くらい待つ。  ダリル王子の耳に口を寄せた。 「結婚したらたくさん愛させてください」  ダリル王子の顔が紅潮する。 「エリック、ダリルに何を言った! そんな可愛い反応パパにはしてくれないじゃん!」 「内緒です! エリック行くぞ」  部屋を出ようとするダリル王子に陛下が何かを言っているようだが、父が後ろから陛下の口を塞ぎ、何を言っているか分からなかった。  部屋を出て扉を閉めるとダリル王子が私の手を握る。 「キスより先は許されていないが、手を繋ぐくらいはいいのではないか?」  ダリル王子のデレの威力は凄まじい。手を握り返す。満悦の笑みを向けられた。  初夜は絶対に抱き潰す!
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