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華美な装飾の施された両開きの扉をノックする。返事はない。
預けられている鍵を胸ポケットから出した。この世に2つしかない。部屋の中にいるであろう主人と自分だけ。渡された時の高揚感は今でも鮮明に思い出せる。
鍵を差し、手首を捻ると小さな音が鳴った。大事に鍵をしまい、扉を開いて中に入る。
天蓋付きの大きなベッドに足を向けた。ベッドの真ん中で体を丸め、心地良さそうに眠っている。
長いまつ毛が絹のような頬に柔らかい影を落とし、ツヤツヤの唇は緩んでいた。胸まで伸びた金の髪が白いシーツに映る。
このままベッドに乗り上げ、組み敷いて抱ければ、と何度思ったことだろうか。無体を働くことなどできるはずもなく、今日も穏やかな寝顔を噛み締めて声をかける。
「ダリル王子、起きてください」
んっ、と気怠げな声を漏らしてまつ毛が震えた。ゆっくりと瞼が持ち上がり、濁りのない澄んだライトブルーの瞳が露わになる。
数回パチパチと瞬きをして視線が交わった。
「エリックおはよ」
「おはようございます、ダリル王子」
「起こして」
両腕を伸ばされた。手を引っ張るなどできるはずもなく、失礼します、と首の下に腕を差し込んでそっと起き上がらせる。
「陛下がお待ちですよ」
「父上? ……まだ約束までに1時間もあるけど」
時計に視線を送り、大きなあくびをして両腕を伸ばす。
「すぐに連れてきて欲しいと頼まれました。着替えてください」
「着替えさせて」
ダリル王子は自分で動こうとせず、広いベッドで足を投げ出したまま。
「そこでは着替えさせることができません」
ベッドの端に移動したことを目の端で捉え、服を選ぶ。
柔らかな絨毯に膝をつき、ダリル王子が身につけている滑らかな寝巻きを脱がせた。
透き通るような美しい肌を網膜に焼き付けて海馬へ送る。このまま欲のままに撫で回して舐め回したい。頭の中で実行しながら、表情は崩さずに服を着せる。
着替え終わると足をこちらに伸ばした。土踏まずに手を添えて、甲に唇を落とした。
生涯、貴方だけに忠誠を誓います。
そして、口で触れることを許されていることに最上級の喜びを感じる。
靴を履かせると同時に立ち上がった。
「髪は纏められますか?」
「うーん、父上をあまり待たせるのもな。このままでいい」
「では参りましょう」
扉を開き、ダリル王子の一歩後ろをついて歩く。
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