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09「試煉」【三竹・尾中side】夢鴉(むあ)リライト
【三竹・尾中side】03
「おはよう」
「お、おはようございます。今日は宜しくお願いします」
「ああ、よろしく」
たどたどしい声に苛立ちを感じる。
緊張しているのか、肩の張った女社員――尾中の目の下には、くっきりとしたクマが居座っていた。
「寝不足みたいだが、それでも本気で文鳥を愛してるのか?」
「えっ」
「文鳥は人の気持ちをよむから、本心から穏やかに、つとめないといけない」
(やる気がないなら帰れ)
言外にそう言い、俺は大きなため息を吐いた。すると尾中はいきり立ったように肩を立てると、眉間に皺を寄せた。
ムカついてます、と書いてある顔だ。
「アニメ好き入社で何が悪い(怒)」
「はあ?」
何の話だ、と困惑するが、尾中はフンッと苛立たし気に鼻を鳴らしてそっぽ向いた。
なんだこいつ。文鳥の話をしているのに、何故そうなるのか。
(これだから女は)
俺はそう吐き捨てると、微妙な空気の中ブリーダーの家に向かうため持っていたキーを尾中に押し付けた。
【三竹・尾中side】04
数台しか無い社用車の中で、尾中はオートマの白い車を選んだ。
助手席に座り、カーナビを弄る。時折道を間違えそうになる尾中を誘導する。
「文鳥たちにヒリヒリした態度で関わるなよ」
俺はキリキリとしている尾中にそう告げると、見えて来たブリーダーの家を見た。
尾中からの憎たらし気な視線何て、どうでもよかった。
ブリーダーの家の前に着く。一階が約二十畳ある古建築(古民家)は、相も変わらずデカい。
小柄な飼い鳥達の強敵の冬場の隙間風はどうしてるのだろうか。未だにわからないまま、俺は家の中に入った。
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