真冬の空に光る星

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 私達は他愛もない話をしながら、お菓子作りを続けた。  途中、オーブンでケーキを焼いている最中に夕飯を食べたのも、ゆるい感じがして楽しい。  そうして21時頃、ガトーショコラは焼き上がり、夜のお茶会が始まった。 「素晴らしい完成度の高さだな」  門馬さんが満足げに呟く。  彼の言うとおり、ガトーショコラは素晴らしい出来栄えだった。  焼き加減もバッチリだし、添えられたふんわりホイップも、表面に輝く粉砂糖も美しい。  こんなにも料理が楽しいと思ったのは、生まれて初めてだ。 「さすが門馬さんですね」 「だろ? お前の指導もなかなか良かった」  顔を見合わせ微笑んで、一切れずつカットしたケーキとホットコーヒーをダイニングに運ぶ。    門馬さんがつけたテレビからは、少量の音でニュースが流れていた。 「たまにはこっちでお茶しないか?」  彼に言われるまま、ケーキのお皿とカップを手に、ソファーへ移動する。  ローテーブルに並んだガトーショコラと、革のソファーに隣同士で座る私達。 「………………」  距離が近い。今にも腕に触れてしまうほど。  バレンタインの夜に、こうして並んで座ってまったりするなんて、……まるで恋人みたいじゃない?  急激に体温が上がって、鼓動が伝わってしまうのを恐れた。  落ち着いて。門馬さんはそんなつもりないし、私だって振られたばかりで新しい恋をするエネルギーなんてない。  まして、こんなに素敵な人。  ちらりと見上げると、彼もこちらを見ていて視線が重なった。  ドクッと大きく心臓が弾む。  さっきから門馬さんは、無意識なんだろうけど私の背中側に腕を回してソファーの背もたれに手を置いているので、肩を抱かれている錯覚にドキドキしてしまう。  気を紛らわすようにコーヒーを飲み、熱くて舌を火傷した。 「じゃあ早速」 「い、いただきます」  ガトーショコラは本当に美味しかった。  優しい甘さの中にほろ苦さもあって、しっとりした食感も抜群。 「美味いな」 「大成功ですね」  あまりにも美味しくてケーキに夢中になり、自然と心も解れていく。  温かいリビングに、ニュースキャスターの声が響いた。  美味しいケーキとコーヒー、門馬さんの嬉しそうな笑顔。  何もかもに癒されて、心が和んでホッとする。  実家で暮らしている時も、慎司との同棲中も、ここまで穏やかな気持ちになることなんてなかった。  門馬さんは、自己肯定感を上げるだけじゃなくて、人を安心させる力もあるみたい。  
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