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第一章 魔法が生きる街ロマラン
今日も巨大な黒い山から、もうもうと白い湯気が出ていた。小さい頃におじいちゃんから、あれは石炭クズが自然発火しているんだと聞かされた。だけど、私には巨大な生き物が息を潜めている様に思えて他の子供達みたいに近づくことが出来なかった。さすがに十六歳になった今では、すっかり見慣れた風景だ。それでも今日の様な特別な日は、ボタ山もどこか誇らしげに見えた。
「あー、気持ちいい」
ひやりと澄んだ空気を吸い、伸びをしていると細い路地から腰の曲がったおばあさんがキャリーバッグを押しながらゆっくりと歩いてくる。
「カルマさん、おはようございます」
近所に住む百歳近いカルマさんは昔は北の炭鉱住宅に住んでいたけど、数年前に広場の近くに引っ越して来た。
「おはよう。風邪はもういいの? 秋の風が冷たいからお互い気をつけましょうね」
そう言って広場の方へゆっくりと歩いて行く。聞いた話ではカルマさんは自慢のジャムをお祭りのバザーに出すつもりらしい。
「皆んな張り切ってるなあ」
日曜日の早朝、すでに沢山の人達が今日のお祭りの為に中央広場に集まり始めていた。
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