631人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
コーヒーショップ ①
結局、その日は朝食を食べ、自分ができるところまで片付けたあと、立花に声をかけ家路についた。
立花さん、迷惑かけられっぱなしなのに、全然怒らず、むしろ心配ばかりしてくれていたよな。
申し訳ないしかない……。
本当は真美にふられ、落ち込んでいるはずの真司だったが、立花のことでそんな気持ちもすっかり忘れていた。
そして帰宅した真司は、今日の立花との事を思い出しているうちに寝てしまっていた。
佐々木 真司 28歳。
大学を卒業後、住宅会社で働いている。
仕事での成績はよくもなく、悪くもなく、いたって普通。
容姿に関しても、どこにでもいそうな平凡顔に、背丈も普通。
本当にどこにでもいそうな感じだ。
学生の頃は、なんとかすれば、なんとかなるかもと、色々試行錯誤してみたが、なんともならなかったので、今は小綺麗にするぐらいで、もう学生の頃していたようなこともやめてしまった。
それでも彼女もいて、平和に暮らしていたが、昨日その彼女にも振られてしまった。
理由が……普通すぎる、と。
一生懸命していた真司だったが、そこを突かれてしまうと、もうどうしようもない。
そんな平凡な生活をしていた真司が犯してしまった失態。
普通な男には非現実すぎることだらけだった。
家に帰り熟睡していた真司が起きたときは、もう夕方になっていた。
そうだ!立花さんにお礼とお詫びのメールしてなかった!
これは社会人として……いや、人としてしなくてはならないことだ。
いそいで立花にメールをする。
しばらくして、立花から返信メールが届いた。
『そんなに気になさらないでください。こちらこそ、変なお願いをしてしまい、すみません。ご負担になっていないですか?』
真司は立花からの返信を見て嬉しくて、ニヤニヤしてしまう。
なんと返信したら変ではなく、自分の気持ちを伝えれるか色々考えた挙句、送ったのが、
『全くです。私こそ楽しみにしています。』
今の真司にはこれが精一杯。
急いで立花に返信をする。
『よかったです。では、佐々木さんからのご連絡お待ちしています』
立花からの短いメール。
でも真司にとっては、心が温まるようなメールだった。
最初のコメントを投稿しよう!