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すれ違う2人 ③
「ただいま…」
時計の針が25時を回ったころ、蓮が帰ってきた。
「おかえり」
真司が玄関まで迎えに行くと、蓮が真司の肩に頭をポンと乗せる。
「ただいま…遅くなって…ごめん。ちょっとここで充電させて…」
蓮は持っていた鞄を玄関にドサっと置き、真司にもたれかかった。
「蓮…中に入ってから…」
真司が蓮を室内に連れて行こうとした時…
ん?タバコの匂い?
蓮のスーツからはタバコの匂いがした。
蓮、タバコは吸わないのに、どうして…
それに、少しアルコールの匂いもする。
「蓮…今日どこか……」
蓮に聞きかけて、真司は口籠った。
「ん?」
蓮が顔をを上げと、ほんのり顔が赤くなっている。
蓮…酔ってる…?
仕事で遅くなるって聞いてたけど…
気になる…
だけど、俺からは聞かないって決めたから…
「…ありがとう真司。充電できた」
しばらく真司の肩に顔を埋めていた蓮が靴を脱ごうとかがんだ時、蓮の足元がふらついた。
‼︎
「蓮‼︎」
蓮が倒れそうになる寸前、真司が蓮の体を支えた。
「ごめん…ちょっと…足元が…」
真司に支えられた蓮だったが、まだフラフラしている。
これは完全に酔っ払ってる…
「蓮、とにかく中に入ろう。水飲んだ方がいいよ」
「うん…」
真司に肩を借りながら、蓮は部屋へと入っていった。
真司はキッチンには寄らず、蓮をそのまま寝室に連れて行きベットに座らせた。
「蓮、ここで待ってて。水持ってくる」
真司が蓮のそばを離れようとした時、蓮が真司の腕を掴んだが。
「水はいい…真司、ここにいて」
真司を見上げた蓮は、悲しそうな表情をしていた。
「どうした?何かあった?」
真司は蓮の言われるがまま、蓮の隣に座った。
「……なんでもない…真司が側にいてくれるだけでいい…」
蓮はゴロンと真司の膝の上に頭を乗せ目を瞑る。
「…いるよ…蓮…どうした?」
蓮の様子がおかしい…
酔っぱらったとしても、こんな酔い方見たことない。
「仕事でなんかあった?」
「…ないよ…順調…」
蓮は目を瞑ったまま答える。
「じゃあ、誰かに何か言われた?」
「そんな事をないよ」
「じゃあ…」
真司が問いかけた時、真司の膝の上で膝枕されていた蓮から、すーすーと寝息が聞こえてきた。
「蓮…何があったんだ…」
さっきまでの悲しい表情は消え、健やかな寝顔の蓮の髪を撫でながら、真司は呟いた。
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