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すれ違う2人 ④
次の日真司が目覚めると、やはりベットには蓮の姿はなかった。
やっぱり、今日も先に仕事に行ったのかな…?
そう思いながら、身支度を済ませてキッチンに行くと、
「おはよう、真司。昨日は…ごめん」
蓮は二人分の朝食の用意をすませて、テーブルに着いていた。
「おはよ。いいよ、気にしなくて。それより、蓮、体調は大丈夫なのか?」
真司もテーブルにつく。
「大丈夫」
蓮はそう答え微笑んだが、真司にはその微笑みが悲しそうな表情にしか見えず…
「そっか…でも蓮、もし何かあったら俺にいって欲しい。俺を頼って欲しい。それだけはお願い」
「ありがとう…」
また蓮は微笑んだが、それはやはり悲しそうな微笑みだった。
蓮のことが気になりながらも、その日も仕事が忙しかった真司は、いつもの時間に昼休憩がとれず、少し手が空いた時に昼休憩に行った。
「先輩、さっきまで先輩にお客さん来られてましたよ」
昼休憩が終わった真司の前に松野がひょいと出てきた。
「え?この時間のアポは入ってなかったと思うんだけど…」
真司は手帳でスケジュールを確認する。
「仕事のお客様じゃなくて、プライベートのお客さん。かなりイケメンで…蓮さんと同じ会社の人っていってました」
「同じ会社?」
「たしか名前は…と…はい、名刺預かりました」
松野に手渡された名刺を見ると、
「あ、大山さん…」
それは大山の名刺だった。
「その人、結構待たれてたんですよ。先輩が戻る少し前まで…先輩の良い時に連絡欲しいって」
「連絡?」
「聞きたいことがあるみたいですよ。先輩何悪い事したんですか?」
松野が悪戯っぽく笑う。
「大山さんには、特に何も…」
「じゃあ、他の人にはしたんですか?」
楽しそうに松野が笑った。
「してない…と、思う…」
「なんですか、それ。とりあえず、今は店暇なんで、先輩はその大山さんに連絡してきてください」
松野は真司の背中を押して店から出した。
大山さんが俺と連絡を取りたいって…
なんだろう…
不思議に思いつつ、真司は大山に電話をかける。
何度かの呼び出し音の後、
『もしもし大山です』
聞き覚えのある声だ。
「佐々木です。訪ねてきてくださったのに不在ですみません」
『いえ、こちらこそ急にすみません…佐々木さん、少しお時間いただけませんか?』
「え?…」
『ちょっと立花チーフの事でお聞きしたいことがありまして…』
え⁉︎蓮の事?
「…どう言う事でしょうか?…私は立花さんとは…」
『お付き合いされてますよね』
真司の言葉を待たずに、大山が言い放った。
「……」
どうしてそれを…
蓮から職場の人に言ったとは聞いてない…
『やっぱり…大丈夫です。知っているのは私しかいません。それに誰にも言うつもりはありません』
「それで、私に何を?」
『電話では少し…会って話しできませんか?…お願いします』
「…どうして、そこまで…」
『チーフの…立花さんのためです…』
蓮のため…?
「わかりました。では、あのコーヒーショップで…」
「では、あのお店で…」
その電話の後、すぐに大山と会うことになった。
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