真司の想い

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真司の想い

蓮……。 なんでそんなに泣きそうな顔して笑うんだよ。 俺はそんな顔見たくて一緒にいるんじゃない。 俺は……。 俺は……。  真司は小さく震える蓮を抱きしめる。 「なぁ蓮。俺が一緒にいてくれって言っても、別れる方を選ぶのか?」 「別れたくない……。別れたくないけど、そうするのが真司にとって一番じゃないか…」  蓮の声は弱々しく自分自身に言い聞かせるようにも言っているように聞こえた。 「蓮、一つお願いがあるんだ」  真司は抱きしめた蓮の顔がしっかり見えるように、体を少し引いた。 「俺にとって一番だと思う事は、俺に決めさせてくれないか?」 「!」  真司の言葉を聞いて、蓮が目を見開く。 「蓮が俺を思っての気持ちは嬉しいよ。でも、それが俺にとっての一番だとは限らない」 「……」 「俺にとっての一番は蓮とずっと一緒にいる事で、他はどうでもいい事だよ」 「でも、それじゃあ真司の子どもは……ー 「ほら、また蓮が決めてる。俺は蓮といれたらそれでいい」 「……」  まだ不安そうに真司を見つめる蓮の瞳が揺れている。 蓮、そんな顔をしないでくれ……。 俺は蓮にはいつも笑っていて欲しい。 だから……。  真司はソファーに座る蓮の前に跪く。 「蓮、結婚しよう」 「!!」  蓮は驚きのあまり、動きが止まる。 「……。真司、言ってる意味わかってる?」  蓮はまだ真司の発言が信じられないと目を見開いている。 「わかってる。だから、お願いだよ、蓮。俺と結婚してください」  真司は蓮の手を取り、しっかりと握った。 「真司……男同士は結婚できないよ……」  蓮の目から涙が溢れる。  でも、先ほどまでの悲しそうな表情ではなく、嬉しそうな表情だった。 「前から色々調べてたんだ。知らない事だらけだったから…結婚届は出せないけど、パートナーシップ証明書、申請しに行こう。もし蓮が良ければだけど……」 お願いだ。 うんと言ってくれ……。、 「……。うん。申請しに行こう」  全て吹っ切れたように、満面の笑みで蓮がうなずき、そんな蓮を真司がきつく抱きしめた。
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