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2人の気持ち
立花が用意してくれていた料理はどれもワインとよくあっていて美味しく、2人でたわいもない話をたくさんした。
その間、真司はたくさんワインを飲んだ。
しかし、立花はさらに早いピッチで飲んでいたが、顔色は全く変わらずだった。
立花さん、お酒に強かったんだ。
だからこの前、俺が泥酔した時も冷静に介抱してくれてたんだ……。
やはり、前のことを考えると立花に申し訳ない気持ちになるが、それがきっかけで立花と出会えたのは、素直に嬉しかった。
料理も終わり、2人でワインを楽しんでいた。
「あの……立花さんから、たくさん連絡いただいていたのに返事ができてなくて、すみません……」
これは、今日、絶対に謝らないといけないことだ!
机に頭がくっつくかと思うほど、真司は頭を下げた。
「そんな、そんな…。私はこうして佐々木さんとお食事できてよかった時思っていますよ」
立花さんはいつも怒らず、俺を受け入れてくれる。
俺は立花さんになにができる?
「あの……実は、佐々木さんにお伝えしないとダメなことがあるんです……」
立花が俯き加減に言った。
「え?」
いつもの雰囲気の立花ではなく、暗い感じがする。
嫌な予感……。
やっぱり立花さん、俺のこと、もううんざりしていたのか……。
これでもう立花との関係が終わるのかと思うと、心がはちきれそうだったが、真司は仕方ないことと、腹をくくり、立花を真正面から見つめた。
せめて最後ぐらいは、ちゃんとしていたい。
「……」
「……。話って……」
なかなか切り出さない立花に真司が声をかけると、立花はグラスに入っていたワインを一気に飲み干し、深呼吸をした。
「実は、わたしは……ゲイなんです……」
「!?」
驚きのあまり、真司はなにも言えない。
「本当はこのまま佐々木さんに言わずに、友達になれたらな……と思っていたのですが、日が経つにつれ、時間が経つにつれ、言っていないことが苦しくなってきたんです……」
「……」
「もし、佐々木さんが嫌な思いをされたのでしたら、もう連絡もしません……。でも……もしも……知人として接してくださるのなら……また、連絡させてもらってもいいですか?」
立花は俯いたまま真司の方を見ないが、伏せた目からは涙が流れていた。
「……」
真司は立花のあまりにも唐突な告白に動揺してしまい、しばらく黙ったままだった。
立花さんはゲイ。
男が好き。
でも……。
だからって……。
「立花さんがゲイだからって、今の立花さんが変わるわけじゃないですか。俺は立花さんさえ良ければ、連絡を取り合って、またこうしてお食事したいです!」
「!?」
立花が驚き、頭を上げ真司を見た。
「当たり前じゃないですか。俺は、今のままの立花さんがいいんです」
立花の目には涙が溢れ出し、その涙は滑らかな頬をつたい、立花の服を濡らしていく。
そんな立花を見て、とっさに真司は立花を抱きしめた。
「いいん……ですか?」
「もちろんです!また料理、してくれますか?」
「また……食べてください」
立花は真司の胸の中で泣いていた。
真司は、立花がそんな大切な事を自分に話してくれた事が嬉しかった。
真司は立花と、容姿や仕事、立場か違う。
全てにおいて差を感じていたが、立花の事を愛おしいと思った。
ひとしきり泣いた立花も元の立花に戻り、その晩だけで2人でワインを何本も開けるほど飲んだ。
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