3人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
鳥獣使い
「おじい様、今日のノルマのものです」
「おお、ケルト。今日も狩に行ってくれてありがとうね」
「いえ、おじい様。今日もたくさん連れました」
僕は大きなお肉を置くとおじいさんの背中へと行く。
「腰は痛くないですか?良かったらマッサージでも」
「いいよ、ケルト。遊びに行っておいで」
おじいさんはにっこりと笑顔を見せる。
「でも……」
「大丈夫だよ、休憩は大事なもんだ」
「……わかりました。おじい様。では、行ってきます。」
「気を付けていきなさい」
「はい」
俺の名はケルト・ルシュード。山の中でひっそりとおじいさんと暮らしている。
前までは東京で26歳のニートである佐倉一二三として活動してたんだけど築いた時にはこうなっていたんだ。
まぁ、住んでいる所が気持ちよくてね。のどかな緑と麗しき風と水。ここってヨーロッパのアルプスではないよね?
俺は木々を潜り抜け、草原へと出る。
「えっと… ゾクラム、サンダー!!」
俺が大きな声で唱えると空から竜と鳥の鳴き声が聞こえてきた。トーン的には結構大物。
その数秒後、黒い影が頭上から来たと思ったら、たちまち砂ぼこりが舞う。
ドオオォォォォォォンンンンン!!!!
「ヴォォォォォォンンンンンン!!!」
「ケェェェェンンンン!!」
ゾクラムとサンダーが一斉に雄叫びを上げた。やっぱ迫力スゲー!!
「よしよし、いい子だ。はい、今日のご褒美だ」
俺はゾクラムとサンダーに餌を与え、頭を撫でてやるとゾクラムは目を細めて嬉しそうに喉を鳴らし、サンダーも頭をこすり付けてくる。
ここで解説しよう。ゾクラムとサンダーは、俺が飼っている竜と鳥だ。
ゾクラムは、全長10mほどの大きな翼を持ち、脚には鋭い爪が付いている。全身は蒼い鱗に覆われていて、黒い瞳が鋭く光っている。まさにドラゴンって感じの見た目だ。
サンダーも同じく全長10mほどの翼があり、尻尾に雷のような形の毛が生えている。体は全体的に黄色っぽい色で羽毛が生えているためフワフワしている。口には牙が生えており、足にも鋭い爪がある鳥獣だ。
俺は鳥獣使いである。
この世界にとって鳥獣使いは、とても希少な存在であり、その力を手に入れたい貴族からはとても狙われる存在である。
この家は、もともと鳥獣使いの家系らしく、俺が転生する前のこの家族は、この山でひっそりと暮らしながら鳥獣使いとして生計を立てていたらしい。
だが俺が転生する1年程前に、両親が病に倒れてしまったため、俺が代わりに狩りや家事をすることになったのだ。
もちろん、この鳥獣使いとしての力も、俺はあまり使わないようにしている。
そして、俺の秘密はもう一つある。それは…
「サンダー、例のものを出してくれ。」
「ケェェェェン!!!
鳴き声と共に口から出したのは赤い血とドクドクと動く内臓のようなもの。
「ううぅ、嫌だなぁ。」
俺は、サンダーの嘴から取り出した内臓を見て思わず顔をしかめる。
そう、俺の秘密は魔物の心臓を食べることである。
「でも、これも生きていくためには仕方がないことなんだ。」
俺は自分にそう言い聞かせる。
だって、俺はまだ子供なのだ。今、14歳という成長期なんだぞ!! そんなときに肉を食べないでいつ食べるというんだ!? そんなことを考えているとサンダーが心配そうな顔でこちらを見つめていた。
「大丈夫だよ。ほら食べてあげるからね。……うっ!!」
何故俺が内蔵を食べなければいけないのか。それは俺の身体がとても柔らかくなってしまったことに関係している。
鳥獣使いには、1人1人異なったデメリットを持っている。
その中で俺は「仮に内蔵を食べなければ30分後に身体が分裂する」というデメリットを持っている。
しかも、分裂するときに俺の意識は消えてしまうのだ。
そんなの嫌だ!!俺はまだ死にたくないんだ!! だから、俺は魔物を食べることで生きながらえているのである。
「うぅぅ、不味いぃいいい!!」
俺が内蔵を食べていると同時に赤く染まった液体がぼたぼたと噴き出てくる。
多分今の俺の目はただ黒く、ぐるぐる目を回転しているだろう。
サンダーバードが心配そうにこちらを見つめてくるが、今の俺にはそれを無視して食べ続けるしかなかった。
「よし、これで大丈夫だよね?」
俺は、ようやく食べ終えた内蔵を見て大きくため息を吐いた。
「ふぅ~。」
「クェェェン!」
俺の肩の上でサンダーは悲しそうに鳴く。
「ごめんね、ゾクラム、サンダー。やっぱり内蔵は苦手だよ。」
ゾクラムとサンダーは俺の言葉に何度も頷いた。
それから俺はしばらくの間、ゾクラムとサンダーと一緒に休んだのだった。
最初のコメントを投稿しよう!