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出会い
「ふわぁ~。よく寝た」
俺が目を覚ました時にはすでに空がオレンジ色に染まっていた。
「やべ、帰らないと。ゾクラム、サンダーまた明日ね」
俺がゾクラムとサンダーに別れを言ったその時だった。
「そこの少年、ちょっと待ちなさい」
「え?」
俺は声のした方を見ると、そこに立っていたのは女性だった。年齢は20代前半くらいに見える。
髪は長く銀色に輝きとても美しい。目は切れ長で鼻が高く、唇は薄く桜色だ。
服装は黒いマントを羽織り、腰には剣を差している。
その女性は俺に向かって歩いてくると俺の目の前で立ち止まった。
「君、名前は?」
「……えっと、ケルトです」
「そう……、ケルト君。そこのドラゴンと鳥獣についてちょっと聞いていいかな?」
女性はゾクラムとサンダーの方に顔を向ける。
「……っ!!」
ゾクラムとサンダーは警戒するように女性を睨む。
「大丈夫ですよ、2人とも」
俺はそう言って微笑むと、2匹はすぐに大人しくなった。
「ありがとうね」
女性はそう言うと再び俺の方を見る。
「それで……何が聞きたいんですか?」
俺がそう聞くと彼女は少し考えるような仕草をした後口を開いた。
「……君って鳥獣使い?」
「!?」
俺は思わず目を見開いた。なんで分かったんだ!?もしかして俺の秘密を知っているのか?だとしたらまずいぞ、もしこの人が鳥獣使いを狙っている人だったら……。
そんなことを考えていると彼女はクスリと笑った。
「安心して、私は別に君の敵じゃないから」
「え?」
彼女の言葉に俺は首を傾げる。すると彼女は微笑みながら言った。
「実は私ね、ある人から頼まれて探し物をしていたの」
「……探し物?」
俺が聞き返すと彼女は大きく頷く。そして俺の手を掴むとこう言った。
「そう、探し物とは君のことよ」
「え?」
俺は再び驚いた。俺を探していた?一体どういうことだろう?それになんで俺が探されているんだ? 俺がそんなことを考えていると、彼女は話を続けた。
「私はね、ある人に頼まれたの。『鳥獣使いを探してくれ』ってね」
「俺を貴族の力として使うですか?」
「ふふふ、私が貴族であっても、そんなことはしないよ。私はね、ただ純粋に
鳥獣使いの力が欲しいだけ」
「力ですか?」
「そう、その力があれば私はもっと強くなれると思うの」
彼女はそう言うと俺の目を真っ直ぐに見つめてきた。その目は真剣そのもので嘘を言っているようには見えない。
「……分かりました。ですが俺には家族がいるのですが」
「家族?」
「はい、ちょっと来てください」
俺はゾクラムとサンダーを鳥獣使いの技で収納すると、家へと案内した。
「ここが俺の住んでいる所です」
俺が家に着くと彼女は驚いたように目を見開いた。そして家の中へ入っていくと、そこにはおじいさんが座っていたのだ。
「おお、ケルトかお帰り」
「ただいま帰りました。おじいさま」
「ん?その方は誰じゃ?」
おじいさんは不思議そうに彼女を見る。すると彼女はにっこりと笑ったまま自己紹介を始めた。
「私はヴェルファイア帝国の騎士、エレインと申します。以後お見知りおきを」
「なんと!帝国の騎士様がこんな山奥に来るなど珍しいこともあるものじゃな」
おじいさんは嬉しそうに言うと、彼女は小さく首を振った。
「いえ、私が来たのは偶然ですよ」
「ん?それはどういうことじゃ?」
おじいさんが首を傾げると、彼女は俺の方を見る。そして再び口を開いた。
「実は私はケルト君を探しに来たんです」
「ケルトを?」
「はい、私は彼に用がありまして」
彼女はそう言うと俺の方に視線を向ける。そして再び口を開いた。
「単刀直入に言いますね。私と帝国の王として君臨してくれませんか?」
「え?」
彼女の言葉に俺は思わず固まってしまう。
「えっと、それはどういう意味ですか?俺にはよく分かりませんが」
俺がそう言うと彼女は少し困ったような顔をした。そしてゆっくりと説明を始めたのだ。
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